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「…は?」
数回瞬いて、まじまじと端正な顔を見た。
軽く眉間に皺が入ってそうな表情で、見られている。
……!冗談か!アメリカンジョークってヤツだな!
全く、普段冗談言わない人がそう言うこと言うと、びっくりするからやめて欲しい。
冗談っていうのは、使いどころが重要です
「そういうのは、もっと大人になってから言いなさいな。」
5つは年下だろうなぁ、と立ち上がりながら、幼い子にするように頭を撫でる。
不機嫌そうな顔は、大人の色気よりも、可愛らしい反応の方が感じられてしまう。
がし、と腕を掴まれた。
ん?と首を傾げながら、そちらを見る。
怒ったような視線が、私を射抜いた。
「俺じゃガキだってか?」
「むしろ、私がおばさんなのよ。」
その目を見なくていいように、手をかざす。
はー、びっくりした。
心臓止まるかと…馬鹿にされたと思っちゃったんだよね、ごめんよ、レオン。
なんて、心の底で思って、掴まれた手を離してくれないかと、ちら、と見る。
が、なんか、強くなってるようにしか思えないんですけど。
しかも、片手を視線から逃れるために、目許に翳してるから、身動きとれねぇ…!
ジルたちに背中向けてるから助けを求めることも出来ず…。
というか、そんなことしたら、何か収拾がつかなくなる気がする。
『ムキになるのも程々にしないとねー?』
「?」
首を傾げたのが若干可愛く見えたのは、きっと私の気のせいで。
膝をついて、翳していた手を、がっつり目隠しにする。
うわ、睫毛長くね?手に睫毛当たるんだけど、くっそ羨ましい。
つーか、顔ちっちぇー、片手で両目隠せるって…なんか色々負けた。
全くもう、年上をからかいよってからに。
掴まれている腕を少し動かして、反対に彼の手を掴む。
そのまま耳元に唇を寄せた。
「捕まえられるものなら、捕まえてごらんなさい?」
吐息がちに吹き込めば、びく、と一瞬拘束が緩む。
その隙にするりと抜けて、立ち上がった。