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レコーディング…?
と首を傾げていれば、悪戯っ子のように笑われた。
そして、じゃーん、と見せて来たCD。
それは、お店でわかりやすいところに積まれているそれで、首を傾げる。
「これね、ママが歌ってるの。」
「………はぁ?!」
「すごいでしょー?ちなみに、作詞は氷雨ちゃんってことになってるから。」
「…え?いや、どう、…はぁ?!」
ほらココ見てー、と作詞のところを見ると、私がHPで使っていたHNが書かれている。
…うそだろ、と思い曲名を見る。
どこかで見たことのあるそれ。
「ボカロ?!」
「そうなのー、ちなみにKAITOはお兄ちゃんがやってくれてるの。」
「へー、何、MEIKOとミクとKAITOだけなの?今のところ。」
そう聞けば彼女は楽しそうに笑った。
嫌な予感が、する。
思わず、椅子ごと母親から離れる。
「レンきゅんはお兄ちゃん、リンちゃんは氷雨ちゃんにやってもらうことが決まりましたー!」
「っふ、ざけんなー!」
どんどんぱふぱふ、って口で言うな、ツッコミが足りなくなるから!!
しかも、兄妹でリンレンとか辛い、何それ双子じゃないし。
なんて思ったのも見通されたのか、にこり笑う母親。
「大丈夫、お兄ちゃんと氷雨ちゃん、歌声よく似てるから。」
そうだった、兄は両声類だ…。
って、そうじゃない、そういうことじゃないんだよ。
なんて正面を見るが、聞いちゃいねぇ。
ルカさんが出たら氷雨ちゃんよろしくね、じゃぬぇぇえええぇえぇえ!!
しかも、電子じゃないからね、これ。
90年初めにまだ音楽奏でられる程の技術はないからね。
肉声で声変えて歌ってるだけだからね?!
「あー、無理、頭痛い。」
「大丈夫?熱かしら?」
首を傾げる母親に更に痛みが増した。
いい、寝れば治る、と部屋に戻る。
「…夢じゃなかったのか。」
翌日、つけたテレビから、有名アーティストが日本でレコーディング、という声が聞こえる。
そこに映っているのはまぎれもなく、あの、母親で。
「はぁ…、」
ついた溜息が異常に大きく響いた。