旦那 | ナノ



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湘北訪問

水曜日、若干用意してから、私は部活を早抜けした。
バスケ部員、特にマネージャーからは不満が出たが、許せ、とだけ軽く言って、逃げた。
そして、電車に乗って、ついた湘北。
案外駅から近いようで迷わずに来れた。
そのまま、体育館にお邪魔する。

「お邪魔しまーす。」

小さく言って、中に入ると、バスケ部員が練習していた。
おおやってる、と思いながら、とりあえず、休憩になるまで待っておこうと、端っこの方に座る。
見ながらある程度、癖とリズムを覚えて、曲を口ずさんでいた。
ぴぴー、と彩子の笛が鳴って、休憩に入る。
誰が最初に気がついてくれるだろうか、と思っていたら、彩子が瞬間的に此方を見た。
そして、嬉しそうな笑顔で、両手を広げて走ってくる。
此処じゃ危ないな、と立ち上がって、両手を広げた。

「氷雨ー!!」
「っと、彩子、危ないよ。」

ぎゅう、と抱きついてくる彩子に苦笑しながら、ポンポン、と背中を叩く。
ふと、その向こうの驚いた顔に気がついた。

「よ、久しぶり、リョーちゃん。」
「氷雨、何でお前が此処にいんの?」

ぽかんとした顔とその言葉に、その他全員がえ、という顔で、リョーちゃんを見る。
うん、実際、この間退院ちょっと前に色々手伝いに行ったし。
そこで学校の話とかもしたもんねぇ。
彩子が離れ、私はニコニコ笑って、幼馴染なんだ、とだけ囁く。
吃驚した顔を向けられ、そこら辺に落ちてるボールを拾った。

「リョーちゃん、後でやろうよ、1on1。私に勝てなきゃ、神奈川No.1ガードには成れないよ?」

ふふ、と笑ったら、いら、とした様子で、私に近づきボールをひったくるリョーちゃん。
思わず吹き出して、頭をガシガシと撫でる。

「言っとくけど、私これでも、神奈川No.1ガードと戦ってるんだからね?」
「っ牧と?!」
「ええ、あれ?言ってなかったっけ?私、海南大学付属高等学校男子バスケ部マネージャーよ?」
「陵南じゃ、ないんですか?」

湘北の一年生の子が驚いたように首を傾げた。
え…?ああ、そっか、2年生以降は大会であったことがあるから知ってるけど、一年生は初対面が陵南だもんな。
一人で納得してから、ふ、と笑む。

「あれはねー、彰くんにお願いされたのと、偵察かなー?ライバルのリズムは全部覚えとかなきゃ。」

にっこり笑った私に、怪訝そうな顔をするほとんど。
が、こいつやべえ、って顔をしたリョーちゃん。
慌てたように声を上げた。

「何人、出来るようになったんだ?」
「んー、去年のIHに出てて今年も出てきそうなところの今年3年生以上と、神奈川の強豪だからー…。」

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