旦那 | ナノ



073
しおりを挟む


彰くんは文系のみでいえば、そりゃぁ、できる。
理系の酷さが信じられないくらいに出来る。
国語とか、普通に草書も読めてて吃驚した記憶が…。
うん、その後教えてもらったんだけど、なんか、実家がお家元っていうの?
華道だっけな、で、昔から日本文化に親しんでたとか。
普段はそうは見えないけど、着物を着るとまるで別人になる彰くんに、いつもそんな位真面目にいれば良いのに、と告げて不貞腐れた経験もある。
ちなみに、お母様は美人な方でした。
これこそ、大和撫子、って感じの和服の似合う方で…。
数回あっただけだが、感激するくらいに美人さんで、困ったことがあったらいつでも言って頂戴、と言って下さいました。
あと、お花に興味があるならいつでもお家にいらっしゃいと。
それで、去年の冬休みに東京に行ったりもしたけど、まあそれは閑話休題。
目の前の越野君が険しい表情をしている。

「嫌だ、それだけは…。」
「何でそんなに?」
「あいつ、俺のこと馬鹿にするんだぜ?自分だって数学できねーくせに。」

絶対それだけじゃないだろ、と感じる表情をしながら、不満そうに告げた彼は、更衣室から出てくる彰くんを見やった。
彰くん、彼に何をした…と思いながら、湘北バスケ部を見送りにへ出る。
富中エースと桜木花道に喧嘩売ってる彰くんにため息を吐いて、田岡先生のところに言って、今日気がついたことを報告。
それから、その弱点を潰すための練習方法の提案。
これがあるからこその、ベンチ見学可能ですとも。
ふと、田岡先生に声をかけられる。

「今日のやる気のある仙道はどういうことだ?」
「あー…私との賭け試合が掛かってたからじゃないですかね。」
「賭け試合…?」
「ええ、さっきやってた1on1です。」

詳しく教えろ、という目線が投げかけられ、肩をすくめていう。
簡単には、普通の1on1です、ただ、身長的な問題で彰くんはジャンプ無しで。
私が勝てば、彰くんは練習のロードワークを+1kmと私の命令を3つ聞く。
彰くんが勝てば、私に命令ひとつ。
賭け試合をするためには得点、リバウンド、ディフェンス…まあ、スティール、もしくはパスカット、アシスト、で規定のラインを超えるってのがあるんですけどね。
告げれば、ふむ、と顎に手を当てる田岡先生。
…何する気なんだろうか、彼。
まぁ、私には関係ないよね、陵南の話だし。
なんて思っていると、正面に大型動物が。

「水曜日、楽しみにして、マス。」
「あ、うん、あんまり期待しないで待っててね。」

律儀な子だな…と思いながら、手を振って見送る。
ぺこり、と頭を下げる彼は彩子が言っていた程、無愛想に見えないし、私が思っていた程、不器用でもなさそうだ。
…後ろから、突き刺さるような彰くんの視線を感じたが、無視することに決めた。

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][back to main ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -