旦那 | ナノ



049
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こそ、と誰にも聞こえないように言われて、眉を寄せた。
いや、まあ、確かに、彰くん=仙道彰だと知っているのは宗くんだけだが。
プレイスタイル的にはそのままだから、先生にはお見通しってことか。
了解です、と肩をすくめて、2枚のプリントを重ねて折る。
ポケットに仕舞って、ふと、皆さんを見渡した。
真剣にプリントを見ている、紳先輩と宗くん。
投げやりながらも目を通している先輩方。
宗くんから声がかかる。

「氷雨ちゃん、これ、」
「え?」

見せられたプリントを覗き込む。
綺麗な指の先には連勝した場合、という言葉がかいてあった。
『一ヶ月で連勝記録が一番長いものには、休みを一日与える。(ついでにマネージャーも)』

「ついで扱い……!!つーか私はそんな簡単に休みを頂けるんですか。」

存在価値…!!
思わず膝をついた。
一日一日、頑張って来た私の一年はついで程度で休ませられるものだったんですか…!
いやまあ、確かに他の男子マネとかもいるけどさ?
そのまま体育座りに移行。
はぁ、とため息を吐き、うぅ、と声を上げれば心配そうに宗くんが隣に膝をつく。
どうしたの?と聞かれ、ついで程度なのに、この労働量…とだけ呟き返せば、あはは、と楽しそうな声。

「何言ってるの、この休みの日は俺と氷雨ちゃんがデートする日なんだよ。」
「…でーと?」
「そうだよ、氷雨ちゃんもお休みを貰えるんだから、アイツが部活の日に二人で買い物に行って、ね?」
「いや、別に、休みなのがショックなのじゃなくて、」
「知ってるよ、でも、休みがあるんだから、デートするべきだと思わない?」

いや、その理論はどうだろう?と首を傾げる。
が、彼は特に疑問はないらしく、ニコニコした笑顔を崩さない。
ほら、立って、と手を差し伸べてくる宗くん。
一度目を伏せて息を吐く。
その手を取ろうとすると、後ろから体温が触れる。
なんだ?と思っていればそのまま持ち上げられた。

「う、え?」
「俺とデートでもいいんだぞ?」
「っ、紳先輩、耳元はやめて頂ければと思います。」

面白そうにくく、と笑う紳先輩にふわぁああ、と訳の分からない声を上げて、とりあえず、降ろして下さい、と頼む。
実は足が浮いていたりするのだ。
軽々と持ち上げられるほど小さい訳でも軽い訳でもないと信じているんだが…。
あ、抱き上げられ方?横抱きの縦バージョンとでも言えばいいだろうか。
背中を預ける形で、紳先輩の手の上に座ってる状態だ。

「…柔らかいな。」
「どうせ、贅肉がついてますよーだ。」
「そういう意味じゃないんだが……、」
「ちょ、嗅がないで!それは、色んな意味でNGですから!!」

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