旦那 | ナノ



027
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部活後

くすくすと笑いあって、私は制服を取りにいく。
先輩が後ろから、女子更衣室使いなさい、とある扉を指す。
鞄と制服を持って、そこへ行き、此処ですか?と確認してから入った。
ゴミ1つ落ちていない綺麗さ。
サイズは小さく、ロッカーは5つしかないが、奥にはシャワーまであるようだ。
鞄からタオルを取り出して汗を拭いて、体育着を脱ぐ。
何故下はハーフパンツなのかって?
そりゃ、体育着がブルマだからに決まってるだろ。
流石に…それはつらい。
髪の毛を適当に1つに縛って、もう一度汗を拭く。
それから制服に着替えて、体育着を鞄に仕舞った。
櫛をもって、鏡の前に行き、ポニーテールに縛りなおす。
ピンで後れ毛を留めて、確認してから、更衣室を出た。

「氷雨ちゃん、」
「宗くん、どうしたの?」
「これから暇?」

その問いに頷く。
今日はご飯作る必要もないから、と笑って、待っててくれたの?と聞き返す。
彼は少し驚いたように瞬いてから、さっきの私のようにうん、と頷いた。

「一緒にご飯でもどうかな?」
「賛成。」

一人ご飯じゃないことと誘ってもらえたことに嬉しくなって笑う。
どこ行く?と首を傾げれば、駅前のデパートで買いたいものがあるんだ、とのこと。
ついて行っていいのか、と思ったが、ダメだったら誘わないだろ、と自己完結した。
私が考えているのに気がついたのか、ほら、帰ろう?と手を差し出してくる宗くん。
これは、どういうフラグだ?
いや、手を差し出すって、え?これ手を取ったら確実に手を繋ぐフラグじゃんね?
固まった私ににこり、笑って、彼の左手で私の右手を取る。
顔周辺の温度が上がったのは確実だろう。

「あれ?氷雨ちゃん、耳真っ赤だよ。」
「あぅ…、見ないで頂きたい。」

左手で目許を隠して、右手を引き抜こうと引っ張ってみたら、指を絡ませられる。
ぬ、抜けない。
なんて焦っていれば、左手に持っていた鞄も持っていかれる。

「ちょ、そーくん!?」
「さ、帰ろうか。」
「いやいや、ちょ、色々可笑しくね?」
「そう?そんなことないと思うけど。」
「…え?私が可笑しいの?」

私の常識では普通のことじゃないんですが…あれ?
なんだろう、あまりに当たり前のように言われるから自分の常識が間違っているような錯覚に。
…あれ?90年代の謎が此処にも現れるの?
なんて思っていれば、私の顔を覗き込む綺麗な瞳。

「それとも、俺と手をつなぐのは嫌?」

これダメなパターンじゃね?
しかも、嫌?とかダメ?って言う聞き方は断りにくいんだって。

「そういう、問題じゃ…ないと。」
「そう言う問題だよ?」

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