旦那 | ナノ



026
しおりを挟む


なんだか良くわからないが、キレた先輩の気迫に押され、尻餅をつく。
私に馬乗りになった先輩が楽しそうに笑った。
片手を地面について自分の体重を支える。
もう片手で、体育着の裾を抑えて、捲られないようにした。
下手に動くと先輩が怪我しかねない、と思うと動くことが出来ない。
先輩が真剣な目をしながら言った。

「やっぱり、横になってもある程度の大きさがあるもの。」
「…あの?」
「氷雨ちゃん、今度、洋服作らせて!」

馬乗りになられ、未だに体育着を捲られそうになりながら、その問いに答えろと?
とりあえず、わかりましたからどいて下さい、と叫ぶ。
脇腹に風が当たっていることを考えると、捲れているのだ。
彰くんとのバスケで痩せたとは言え、自慢できる体じゃないんだよ、と思っていたら、ふと、先輩が持ち上がる。

「…レイナがすまなかったな。」

キャプテンだ。
キャプテンが先輩を羽交い締めにしている。
先輩は不満そうにキャプテンを見上げていた。
立ち上がろうとすれば、横から手が差し出される。
牧さんだ。
ありがとうございますと、その手を取れば、ぐい、と強く引かれる。

「っ、」

牧さんが驚いた顔をしているのが目に入って、ぽす、とぶつかる。
慌てて離れて、すいません、と頭を下げた。
牧さんが俺こそ、力加減が出来ていなかった、と眉を寄せる。
このままではこの間の二の舞になる、と直感した私はすぐさま行動した。

「私は牧さんのおかげで怪我1つありませんから、大丈夫です。ところで、先輩、洋服作るってどういうことです?」

にっこり笑って、牧さんに告げて、すぐに羽交い締めされてる先輩の方を向く。
先輩はキョトンとしてから楽しそうに笑った。

「私、服飾系に進みたくて、母親がそう言う仕事してるのもあって。」

そう言ってから、私をがっちり見る。
それでね、モデルを捜してたの、ずっと。
嫌な予感がする。

「氷雨ちゃん私のイメージにぴったりなんだもん、よろしくね?」

ああ、これは逃げられないタイプの奴だな、とそのとき確信した。
それに、これは夢への一歩のお手伝いなのだろう。

「女性からの頼みは断りませんよ。」
「気障ね。」
「そうですか?普通だと思いますけど。」

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -