旦那 | ナノ



021
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「遅れましたー!」

その声と同時に入って来たのは、一人の女の人。
髪をお団子にしていて、どちらかと言えば可愛い系に分類される整った顔立ち。
慌てたように女子更衣室に入って着替えた後、先生の元へやって来た。

「塚本、今日はどうしたんだ?」
「家庭の事情です。両親が帰ってくるまで待ってたらこうなりました。」
「そうか。」

先輩は失礼します、と体育館の中を忙しなく移動し始めた。
1つの部屋に入って、タオルを大量に運び出し、まとめておく。
それから、使った形跡のあるタオルを拾い集めて、今度は別の扉を開けた。
多分洗濯機があるんだろう。
すぐに出てきて、タオルを取り出した部屋にまた入る。
なかなか出てこないので、練習を見学。
暫く経って、出てきたときに籠にボトルを入れて両手に持っている。
替えらしい。
流石に、全員分は作れんよな。
とぼんやり考えて、目で動きを追う。
壁際を小走りになりながら、一本一本ボトルを確認しながら交換している。
交換が終われば、多分洗濯機のあるだろう部屋に入って行った。
水道でもあるんだろう。
洗い物か…お湯出たりしないのかな?
しかしずっと忙しく動き回っている訳でもないようだ。
しばらくして仕事に一段落つけたのか、私たちの元にやってくる。

「私、塚本レイナ、初めまして、よろしくね!」
「神宗一郎です、…よろしくお願いします。」
「白雲氷雨です、よろしくお願いします。」

ぺこり、二人で頭を下げる。
塚本先輩は私に近づいてにっこり笑った。

「マネージャーやる?」
「高頭先生にお誘いいただいたので。」
「マジ?やった、ちゃんとした後輩ゲット。」
「…ちゃんとした、ってどういうことですか?」

嫌な予感がして、聞いてみる。
その反応でわかってそうだけど、と前置きして先輩は始めた。

「ウチのバスケ部って強いじゃない?」
「…そうですね。」
「しかも、何か良くわかんないけど美形が多いじゃない?」
「………そうですね。」
「結果、アタシ〇〇君とお近づきになりたぁいはぁと、みたいなのが。」
「…わぁ、氷雨、アノ先輩と仲良くなりたぁい。」

顔を引きつらせて、目線を部員に向けて、言う。
先輩がにっこりと笑った。
その表情は、誰が逃がすか、とでも言っているようで、絶望するしか道はなかった。

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