旦那 | ナノ



019
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「私は、純粋に凄いなぁ、としか。自分がこの中に入って練習することがある訳もないですし。」
「ふむ、神はどうだ?」
「俺は先に練習見ておいてよかったです。勝つための努力を見せてもらえた訳ですから。」
「なるほどな、…ボールに触るか?」

二人とも、と磨かれて綺麗になったボールを渡してくれる。
それに触りながら、ふと、思い出したことを伝えた。

「あ、先生、」
「なんだ、氷雨。」
「えっと…今奥の入り口付近で座って飲み物飲んでる先輩って怪我でもしてるんですか?」
「…なんでそう思う?」
「あまりにも不規則、だったから、ですかね?」

自分でも首を傾げながら、聞き返すように伝える。
先生はふむ、とだけ言って、誰かの名前を呼ぶ。
どうやら私の言った人のようだ。
怪我をしとるのか、…ちょっと痛むだけです。
なんてやり取りが聞こえた。
先輩はテーピングもしていないらしく怒られている。
うわぁ…、と思いながらテーピングしましょうか?と申し出た。
自称ママが完璧にしといたから!一応本も見てね、と言っていたのが役に立つ時が来たのかな。
と思いながら、その先輩のテーピングをする。

「これで大丈夫だと思います。」
「ほう、手慣れてるな。」
「テーピングは覚えて損は無いと母に言われてたので、覚えたんです。」

肩をすくめて、小さく笑う。
まあ、私が一番するのは突き指だったけどな。
なんて必要ないことは言わず、考え込んでいる先生から目を逸らし、宗くんを見る。
ボールをじっと見ていた彼は、気がついたように顔を上げた。
バチと音がしそうな視線の合い方をして、思わず目をそらす。
高頭先生に渡してもらったバスケットボールを手に取って、数回ついた。
自分、彰くん、牧さん、姿勢を変えながら、ドリブルを想像する。
うーん、自分のより、彰くんのイメージの方が付きやすいってどういうことなんだろう。
と自分に疑問を持っていると、隣で、宗くんもドリブルを始めた。
リズムを取る。
彼の姿を自身に投影するように、意識。
数分もやっていれば、宗くんのドリブルは多分マスターできた。
でも、まあ、身長がアレだから、別物と言っても過言ではないがな!

「氷雨、」
「はい、なんでしょう?」
「バスケ部のマネージャーをやる気はないか?」
「マネージャー…ですか?」
「そうだ。」

高頭先生は頷く。
んー、とそうすると、基本部活が毎日あって、まあそれは彰くんもか。
バスケは早朝一緒にする位になっちゃうかもしれないなぁ…。
あ、でも一応休日があるのか。

「そうですね、それも、面白いかもしれないです。」
「本当か!」
「え、えぇ。」

あまりの形相に一歩体を引いて、頷く。
思わずもう一歩下がると、とん、と誰かにぶつかった。
振り返れば、そこには牧さんがいて、大丈夫か?と低い声を響かせる。
あ、はいすいません。
反射的に謝ると、キョトンとした牧さんが、頭を撫でてくれる。
くそ、イケメン…!
撫でてくれる手が気恥ずかしくて、嬉しくて、目線だけどこかへやる。
顔が熱い…確実に耳が真っ赤になっているに違いない。
ふと、声がかかった。

「これからよろしくな、マネージャー。」

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