旦那 | ナノ



114
しおりを挟む


「言ってあったでしょ?ノリさんのおうち。彩子と久しぶりに話もしたいし明日の朝帰ろうかなーって」

電話口が騒がしくなって、ため息をひとつ。

「そういえば、なんで家主がいない私の部屋に二人がいるのか聞いてもいい?」
 『えっ…だって帰ってくると思ったから』
「いや、それ理由にならないからね。とりあえず、今すぐ二人は自分の部屋に帰りなさい。で、明日帰ったら二人の家順番にピンポンするから」
 『どっちが先?!』
「さっき宗くんの家に先に電話したから彰くん先かな。その時部屋にいなかったら、私の部屋の暗証番号変えるね。あと私の寝室に入った形跡があったら同じことするからね」

二人はそれは入らないと力強く言い切った。
まあ、最後のラインくらいは信じるけど、一応言っておかないとだからね。
こんなにのんびりしてられるのも、今のうちだけだろうし。
後任マネージャーの問題もあるし。
他の学校の分析と対策も考えていかなくてはならない…IHに出てくるのは、山王だけじゃないのだから。
ん?何か忘れてる?…あ゛っ。

 『氷雨ちゃん?どうしたの?』
「ああ、ごめん。電話の近くに橘くんちの電話番号書いてあるよね?ちょっと教えてくれない?」
 『え、なんで』
「確認しないといけないことがあって!ちょっと宗くんに変わってくれる?」
 『ちぇー、俺も海南行ってればよかった』
「なら、大学で海南にくればいいじゃん。勉強なら教えるし」
 『それはそれでしょ?』

そう言った彰くんは、橘くんの電話番号を教えてくれた後、電話を宗くんに変わった。
どうしたの?とキョトンとした顔で聞いているだろう宗くんにブレないな、と思いながら。

「宗くんのところに相沢さんか橘くんから電話行ってない?」
 『来てないよ?どうかしたの?』
「ちょっとね。じゃあ、また明日」
 『うん、おやすみ』
「おやすみ、ちゃんと部屋に帰ってよ?」

電話を切ってから、許可をもらってもう一度、今度は橘くんに電話をかける。
3コールで出てくれたのは、彼のお母さん。
よくお話をする相手なので、あらぁ、氷雨ちゃん、と言われてから電話を代わってもらう。
どうかしたのか?と不思議そうな橘くんに気になって、と返す。

「IHの分析がどこまで進んでるのか、と、そろそろお願いしてあったお相手さんから連絡くる頃かなって」
 『ああ、なるほどな。ある程度は進んでるぞ。出てくるのは山王だけじゃないからな』
「進んでるならいいんだけど…ほら、後任関係の書類作りながらでしょ?」
 『あー…まあ。でも推薦マネも手伝ってくれてるから、マシな方だな。少なくとも、睡眠は削られてない』

でも、そんなことでわざわざ?と訝しげな反応に、目線をそらす。
見えるわけではないから、意味のないことではあるのだけれど…。
一度、深呼吸してから、告げる。

「そろそろ体調とメンタルの調整の時期…でしょう?」
 『………あ゛ッ』
「うん、私もさっき思い出したから、人のこと言えないんだけどね?…どうする?草案はレイナ先輩のでいいと思うんだけど」
 『塚本先輩の資料持ってんのお前だよな?明日持ってこられるか?』
「うん、休み時間でいい?」
 『仕方ないだろ。昼休み…お前神振り切れるか?』
「…頑張る。突然ごめんね、また明日」
 『ああ…ありがとな。じゃあ明日』

[前へ]/[次へ]

[ back to menu ][back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -