旦那 | ナノ



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ただまっすぐとコートに視線を向ける。
ボールがどう動くか。
試合に集中しているはずなのに、どくり、どくりと心臓の鼓動が手にまで出ているのがわかる。
中央席とはこれほどまでに緊張するのか。

「やっぱり彰くんがPGか…」

決められたシュートに眉を寄せる。
やはり、彼は13番だった。
そのまま点数を重ねられるのを見ながら、軽く唇を噛む。
が、ボールがどこにどう動いているのかを書き続けることを忘れない。
誰がどこでカットされたのか、あちらはどう動いているのか。
それも忘れないように手だけを動かした。
高頭先生がタイムアウトをとった瞬間に、ふう、と詰めた息を吐き出す。
目を伏せて深呼吸。
音が鳴る前にもう一度目を開いて、選手たちを見つめた。
真剣な目で高頭先生の話を聞く彼らに、まだまだ崩れていないどころか、始まっていないことがわかる。
陵南を見れば、彼らは口元に余裕さえ浮かべていて、絶好調なのだろう、と判断した。
それでも、再開後も、陵南か快調なのは変わらず、こちらは攻めあぐねている。
歯がゆく思いながらも、私ができるのはただ彼らを信じ、応援することだけだ。

結局前半終了時に10点の差がつけられてしまった。
だが、10点くらいなら、海南は簡単に取り返せるはず。
始まった後半もやはり、あの13番がシュートを決めていく。
それでもまだ止められている方だろうか。
…いや、止められてないな。
13番のデータがやはり少なすぎた、私たちマネージャーの落ち度だ。
なんて思っていれば、観客席から怒声が響いた。

「コラーッじい!!野ザル!!手抜きすんな!!俺たちが弱いと思われるじゃねーか!!」
「…桜木くん?」

瞬いて、思わず視線をそちらに向けてしまう。
ノブくんの試合中とは思えない返事に、帰ると言い残し背を向ける彼についクスリと笑みがこぼれる。
こんなふうに激励してくれるなんて、彼はなかなかカリスマ性を持っている。
もちろん、桜木くん自身は海南を応援したつもりなんてこれっぽっちもないのだろうけど、それでも、ありがたい。
直後、彼に触発されたように、ノブくんがダンクを決める。

「王者・海南をなめんなぁ!」
「ふふ、」

私にも余裕が出てきたのかもしれない。
口元に浮かんだ笑みをそのままに、視線を彼らへと向ける。
ノブくんのおかげで調子が戻ってきたのか、紳先輩がバスケットカウントでシュートを決めた。
そして、すぐに紳先輩、宗くん、高砂先輩の順番で回されたボールがリングを通る。
だが、陵南も負けてはいない。
彰くんによって紳先輩が止められて30秒が迫る。
バシン、と良い音と立ててボールを掴んだ宗くんが3Pを放った。
ゴールリングを綺麗に通ったボールにホッとしていれば、宗くんが指を一本立てる。
こちらを見てにっこり、笑う宗くんにペンを持ったままの手をひらりと揺らした。

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