旦那 | ナノ



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「すみません!俺たちのノート!落としてください!!」
「やばい、真面目に笑えない、でも下いて良かった!」

私たちの様子に何かを感じたのか、すぐにノートを落としてくれた相沢さんにありがとうございます!と叫んで、その場でしゃがみこんでノートを漁り始める。
陵南ノートを入れているのは確実なので、それさえ探せればなんとかなるはずだ。
二人して鬼気迫る表情でノートを漁っていれば、高頭先生がどうかしたのか?と首を傾げて近づいてきた。

「えっと、ですね。陵南チームに公式試合に出る前にやめたと思われる一人がいまして…慌てて情報を探っているところです」
「そうか、頼んだぞ」
「「はい!」」

橘くんと意図せずかぶった声に少しだけ気持ちが落ち着く。
ふと手に触れたそのノートを取り出した。
表紙に陵南データと書かれており、一瞬ぽかん、と口を開く。

「あった!」
「よくやった、探せ!」

ノートを開きバラバラとページをめくった。
確か書いた記憶がある、と捲りながら視線を走らせる。
いろいろとページを見ながら、記述を見つけ慌ててノートを床に置いて、パン、とページをきっちり開いた。
そのページの文字を追って、眉を寄せる。
顔を上げれば橘くんと目が合う、橘くんが、ノートに手を置いたまま高頭先生を見るので、私は立ち上がって紳先輩の方へと足を向けた。

「紳先輩!と…ノブ君、宗くん!武藤さん!高砂さん!ちょっと集合してください」
「どうかしたのか?」

不思議そうに近寄ってくる彼らに話そうとしてから、ふと視界が歪んでいることに気がついて、あ、と眼鏡を押し上げる。
正常に戻った視界で、彼らの目をまっすぐに見てから、本題を口にした。
敵である陵南のデータが少ない選手について。
ただ、それでも、どんなプレイスタイルなのかくらいはわかっているし、彼らに対して注意を抱かせるために、告げておくことがある。

「彼は、一年学んだ桜木くんだと思ってください。ただ…桜木くんと違うのは、オフェンス重視にならざるを得ないことでしょうか」
「珍しいな、詳しくわからないのか?」
「はい。なんらかの理由で今年から姿を見ていないので、部活には出ていないということになります」

部活以外でバスケをするとして、どこかのチームに所属しているという話も聞かないので、チームとしての試合経験は以前のままでしょう。

「それでなんでオフェンス重視になるんすか…?」
「ノブくんが部活に出ないでバスケしようとしたらどこに行く?」
「リングのあるところ…っすかね?公園とか」
「そう。多分彼もそうだと思うんだ。でもさ、ディフェンスって相手ありきで経験を積んでいくのが基本だから」
「あっ、そうか!相手がいないとディフェンス練習ができないんすね!」
「うん、正解。だから、今回の彰くん…仙道はスコアラーでなくてもチームとしては回るはずです」

気をつけてくださいね。
最後にそう締めて、さあ練習を続けてください!と頭を下げて、その場から去ろうとする。
が、ぽん、と肩に手を置かれて動きが止まる。
振り返ればそこにいたのは紳先輩で。

「氷雨、」
「はい?」

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