胸うさ | ナノ



パーティー
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「そういや、お前って踊れるのか?」
「無理だけど」

ルイに聞かれて、即答する。
何ですか、踊りって、阿波踊りとかも微妙だし、社交ダンスなんて習ったことないし。
盆踊りも周りの人をみながら真似するだけだよ。
なんて思いながら答えれば、何とも言えない顔をされた。

「それマズくねぇか?」
「…なんで?」
「お前、多分、今度のパーティー連れて行かれるぞ?」

私とルイの間に沈黙が落ちる。
一拍、二拍、三拍、

「嘘だぁ…!」
「いや、嘘じゃねぇし」

今まではパートナーを適当に見繕ってたんだが、この間招待状みてたマッチさんが呟いてた。
その言葉に、顔をしかめる。
マッチさんからのおねがいを私が断れると思っているのか。
なんて心の中で叫んで、一度深呼吸する。

「覚えないとマズくない?」
「まぁ、マズいだろうな」
「……ですよねー」

結果、色々協力してもらって覚えました。
マナーとか、ダンスとか、エスコートのされ方とか。
もう、やりたくない…なんて思ったんですが、まあ、覚えた=使うことがあるですよね。


ルイの言葉は嘘ではなかった。
ある日、面倒くさそうな顔をしたマッチさんが、行くぞ、と一言。
どこに行くとか全く言ってくれないんですね、泣きたい。
眉間に思いっきり皺の刻まれたマッチさんは、中々に凶悪です。
その顔で、ズルズルと私を引き摺るようにしながら、高級そうなブティックに連れてこられた。

「いらっしゃいませ」

綺麗に一礼した美人さんが、マッチさんを見た瞬間に複雑そうな顔になる。
美形が不機嫌そうだと、対応に困るのかな、やっぱり。
なんて思いながら、じっと様子を見つめていた。
ら、背中を押されて、お姉さんの前に押し出される。

「コイツに合う正装を一式頼む」

それきり黙り込んでしまって、お姉さんは困ったように私に笑いかけた。
どうぞ此方へ、と言われて、おずおずとその後をついて行く。
振り返ってマッチさんの顔を見るが、複雑そうな表情をしているだけである。
その顔に不安を覚えて、何か悪いことでもあるのだろうか、と視線を彷徨わせる。

「お客様?」
「あ、いえ、今行きます」

お姉さんの不思議そうな声に返して、慌てて追いかける。
連れて行かれた先で、何色が好きとか、丈はどれくらいがいいかとか。
あとは、コンプレックスは何かとか、色々聞かれた。

「此方なんて如何でしょうか?」

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