胸うさ | ナノ



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きょとんとした彼女は考え込む。
俺から目をそらし、少し頬を染めた。
口が勝手に言葉を発する。

「氷雨?やっぱり、」
「違いますよ、そんな関係じゃないです。」

吃驚したように首と手を振る彼女。
それでも怪しむ俺に彼女は優しく笑う。
奥から見える金髪がなければ、手を出していたかもしれない。
小さく頭を振って、聞き続ける。

「どう思ってるんだ?」
「マッチさんは誰にでも優しい人だと思いますよ。それから、誠実で侠気溢れる人ですよね。かっこいいと思ってます。」

外見も内面も。
そう彼女が言った瞬間、奥の金髪がぴくりと動く。
起きてやがるなあいつ。
しかし、同時に彼女の気持ちにそうか、と眉が下がる。
いやでも、そんな風に思ってるマッチと付き合っていないってことは、だ。

「恋人はいるのか?」
「いえ、いませんよ。」

即答。
これは、脈ありか?
真っ直ぐ氷雨を見て聞いた。

「オレのこと、どう思う?」
「トリコさんのことですか?」
「ああ、お前にはどう見える?」
「大きい人だなって思います、体も器も。さり気ない気遣いもありますし、なにより、強いなあって。」
「そうか、ありがとな。」

ああ、これなら、オレ次第できっと彼女を手に入れられる。
そう思って、笑いながら返事をした。
いえいえ、と首を振った氷雨は思いついたように続ける。

「あ、仲間を大切にするあたり、マッチさんと気が合いそうです!」

やはり、まだまだ、マッチには勝てないらしい。
二人がどれくらい一緒に居るのか、オレには分からないが、かなり親しいように見える。
確実にマッチは氷雨に好意を寄せているし、氷雨もマッチを憎からず思っている。
だからと言って負けるわけにはいかない。

「そのうち、オレのことだけしか考えられなくしてやる。」

俺の言葉に彼女はキョトンとして、それからにっこり、挑発的に笑った。

「頑張ってくださいね。」


(他人行儀なその言葉に思わず違和感を覚える)
(だが、勘違いする要素はないように、告げたはず…)
(どうであろうと、彼女を落とす、それだけか。)

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