胸うさ | ナノ



アイスヘル一泊
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アイスヘル一泊*トリコ視点

ナイフを使って穴を掘って、全員をそこに入れる。
それから外に立って、辺りを警戒していた。
入り口のところで凍っていた横たわった男、あれはどう考えても…。
そう考えていた時だった。

「トリコさん、トリコさん。」

下から柔らかな声が聞こえる。
アイスヘルの入り口で会った彼女――たしか、氷雨と呼ばれていた――だろうと、下を覗き込んだ。

「ん?何だ?」
「見張り、休憩してください、その間は、さうが見張っててくれるので。」

彼女はそう言うと、胸からウサギを取り出した。
そしてそのまま俺に向けて投げ上げる。
あがってくる最中でその姿が変容した。
体長は俺のサイズを超え、顔には傷があり、かなり厳つい。
思わず頬が引きつったが、見張りは確かに任せられそうだ。

「よろしくねー!」

という彼女の声が、聞こえたと同時に、ウサギが親指を上げる。
それから、俺を突き落とした。
まったく反応できなかったことに焦りながらも、彼女にぶつからないよう体勢を立て直す。
着地して、彼女の方を見ると、金髪で顔中傷だらけの男と話をしていた。

「多分、猛獣もさうがいれば近づかないですし、さうは耳が長いですから。」
「耳が?」

ふと、聞こえてきた声に思わず返す。
男が不満そうに俺を見てきて、目を細めて見返した。
彼女は両手を頭の上にのせ、ぴょこぴょこと動かす。

「ウサギさんですから。耳がいいんです。危険が近づけば教えてくれますから、安心して休んでください。」

にこり、幼く笑った彼女に庇護欲と支配欲を掻き立てられた。
ぞくり、と体の何処かで何かが沸き立ったが、それに蓋をして、そうか、と答える。
出会ってそんなに経っていない彼女に感じる感情ではない、と自身の考えを笑った。

「そういや、名前は?」
「氷雨と申します。」

聞いていないで呼ぶのは如何だろうか、と思い一応聞いておく。
先ほどとは違い、大人っぽく笑った彼女に手を差し出した。

「氷雨、か。よろしくな!」
「はい、よろしくお願い致します。」

その手に対し、手を伸ばしてきた氷雨に、さっきの激情を感じる。
従順な様子に頬がつり上がった。
もっと、俺の言うことを聞かせたい、と何処か危険ですらある思考すら芽生える。
それを読んだのか、彼女が俺の手に触れる前に、男が彼女を庇った。

「昼間は部下を助けてくれてありがとよ。」

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