胸うさ | ナノ



初めての人間界
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初めての人間界*マッチ視点

いつものように、見回りをしていたときだった。
見慣れない影が1つ。
どうやら人と同じ形をしているようだが…。
近づいて声をかけてみる。

「誰だ。」
「?」

それは、此方を見上げた。
長い前髪の間から、鋭い目が俺を射抜く。
無傷じゃ、いられねぇな。

「人間…?」

聞こえてきた声は、心地よいが高めのアルト。
身長からして、女のようだ。
だが、言った内容が解せねぇ。

「は?テメェなに言ってやがる?」
「…此処、何処?」

質問に答える気ねぇと、そういうことか。
気付かれないように刀に手を添える。
軽く、脱力を始め、質問に答えた。

「、ネルグ街だ。」

困ったように首を傾げるそれ。
暫くそのまま止まったかと思ったら、思いついたように顔を上げる。
戸惑いがちに、口を開く。

「狩り、行い…場所、獲物…?」
「お前、喋れねぇのか?」

意味のわからない単語の羅列にそう聞くと頷きが帰ってくる。
もしかしたら、何かの被害者か…?
いや、まだ油断は出来ない。
力があることは確実なのだ、となったら、仕方ない。
一度それを見据える。

「ついてこい。」

そう行って歩き始めた。
正体不明のそれは素直についてくる。
誰か顔見知りはいるか、と人通りの多い道を通りながら帰ったが収穫は無かった。
それがきょろきょろしているうちに一人の子供に3人を呼ぶよう伝えておく。
どうやら知り合いはいないようなので、素直に家に向かった。
まだ組長に会わせる訳にはいかねぇからな。
扉を開き、入れ、と告げる。
ビックリしたように一度体をこわばらせるも、俺に会釈して家に入った。
単語がわかっているようだし、もしかしたら、筆記は出来るのかもしれない。
そう思いリビングに案内する。
何が珍しいのか、キョロキョロしている奴の目の前に座り、紙とボールペンを差し出した。
俺の方をじっと見る目に、名前を書いてみせる。

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