胸うさ | ナノ



お酒の使用法
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お酒の使用法

それは、リムジンクラゲの中での出来事。
小松と話していた氷雨はちらり、と視線を逸らす。
その先にいるのは3人の舎弟。
思わず、と言ったようにピアスを触りながら、少し不安そうな表情を浮かべる彼女。

「氷雨さん?どうかしたんですか?」
「え、あ、なんでもないですよ。」

小松に声をかけられた氷雨は慌てたように首を左右に振って、ぎこちなく笑みを浮かべる。
そうですか?と首を傾げる小松に一度頷いて、今度こそニコリと微笑んだ。
それでも、その笑顔はどこか不安そうで、小松は眉を寄せた。
が、彼女の後ろから顔をしかめたマッチが近づいてくるのが見え、苦笑に変わる。
マッチは落ち着いた静かな声を出した。

「氷雨、」
「なんでしょっ?!」

声をかけてすぐ、マッチは手に持っていた液体を口に含み、氷雨に口付ける。
突然の事に一瞬目を見開いた氷雨だったが、一拍おいて目を力一杯に閉じた。
マッチは目を細めて、しっかりと彼女の後頭部に手を回している。
合わせられた唇の隙間から、絡み合った舌が見えた。
氷雨の顎へ透明な線ができ、こくり、喉が動く。
それを確認して顔を離したマッチと、そのまま倒れ掛るように彼に縋る氷雨。
誰もが、無言であった。
中でも一番近くで見てしまった小松の顔はトマトのように赤くなっている。

「なっ、何やってるんですか、おじさん!」

最初に声を荒げたのは滝丸。
彼にちらりと視線を向けて、マッチは片頬をつり上げた。

「ああ、少年には刺激が強過ぎたか?」
「違います!」

滝丸の勢いの強い否定に肩をすくめて、彼は彼女を抱きしめたまま座り込んだ。
くたりと、寄りかかるようにしている氷雨は、ぼーっとマッチの顔を見ている。
そして、マッチは静かに口にした。

「酒を飲ませただけだ。」
「…お酒、ですか?」

マッチの言葉に大きな目を瞬かせて、小松が聞く。
こくり、1つ頷いたマッチは、手に持っていたコップを差し出し、掻い摘んで説明した。
氷雨は酒に弱く、一口飲んだだけでも暫く記憶を失う位に酔ってしまうこと。
3人を気にしすぎていて、自分を責めているようだったから、強硬手段に出たこと。
既に彼女が酔い始めていること。
言いながら、自身の首許に頭を擦り付ける氷雨を押さえていた。

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