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苦笑して続ければ、そうか、とだけ返ってきた。
少し眉を寄せた表情のマッチさんは続ける。
「もう行きたくないんだろ?」
「…うん、私の帰る場所はネルグだから。」
ならいい、と静かに笑ったマッチさんはどこか安心したように見えた。
もちろん気のせいかもしれないけれど。
それでも、私がいなくなるのを厭がってくれているかもしれないと思ったら、嬉しくて。
頬が緩むのを感じる。
そして、丁度いいというべきか、気をきかせてくれていた彼らが色々持って帰ってきた。
ありがとうございました、とルイがマッチさんに財布を返していて、さうが私に飛びついてくる。
「きゅい!」
「ん、ありがと、さう。」
頭も耳もいいさうのことだ、全部聞いていたのだろう。
心配そうに頭を押し付けてくる小さなさうに頬擦りをする。
ふわふわで気持ちいい。
「ほら、氷雨、こんなくらい食えるだろ?」
「いくら大丈夫だからって、全く食べないと心配からな。」
ルイとラムに言われて、ありがと、と小さなサンドウィッチを受け取った。
小さいとはいえしっかりとバランスが考えられたそれは、私を思いやっていてくれたのだろう。
だが、シンが不満そうな声を上げ、そちらを見る。
「おい、お前ら何勝手にやってんだよ、俺たちのが先に氷雨に買ったんだからな。」
「そうですよ、はい、お姉さん。飲み物どうぞ。」
滝丸少年が手渡してくれたのはりんごジュース。
サイズが小さいが、これはきっとお高めのそれだろう。
小さくて、ぼんやりしてると気がつかないような心遣いが嬉しくて、口角が勝手につり上がっていく。
「ありがとう。」
笑って、ちゃんと食べきろうと、手の中のサンドウィッチと缶をしっかり握った。
中々時間がかかったけれど、食べきった私の頭をぽん、とマッチさんが叩く。
その顔は、どこか誇らしげで、こくりと一度だけ頷いた。
(「副組長たち、何話してたんだろうな?」)
(「さぁな、うさ公なら分かるかもしれねぇけど…。」)
(「ぎゅあ、きゅいー!」)
(「名前も呼ばず、うさ公なんて呼ぶヤツには教えん、だそうだ。」)
(「え…ラムさん分かるんですか。」)