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バツが悪そうに頭をかきながら、視線を逸らすトリコさんに何度か瞬く。
それから、左右に首を振った。
どう考えても、たとえ知り合いであったとしても、トリコさんが謝る必要はないことだ。
「トリコさんの所為じゃないですから。」
「それでも、悪かった。」
眉を寄せて、そう言ったトリコさんはぽんぽん、と私の頭を叩くように撫でた。
ふと、今まで見たことのない、男の人がいることに気がつく。
葉巻を二本くわえていて、それでいて、血まみれの白衣?を着ている男性。
ぺこり、と頭を下げてマッチさんの隣に向かう。
それから、詳しく話を聞いた。
あの人は与作さんといって、有名な再生屋で、それから、鉄平さんのお師匠様らしい。
その与作さんの案内で、彼の再生所に到着した。
3人を最初にセラピーチューリップに入れてくれた彼は、マッチさんに近寄る。
「お前の足も、それ、まだ完全じゃねーだろ?」
その言葉に目を見開いたマッチさんは慌てたように告げた。
「俺は平気だ!…氷雨がいる。」
「え?私?…人体に使うのは初めてなんですけど。」
話を振られて思わず、眉を下げる。
与作さんと鉄平さんに怪訝そうな表情を向けられた。
軽く頭を振ってから、マッチさんの足元に座り込む。
そっと包帯を解いて、かなり治りつつある怪我の様子を見た。
ふぅ、と軽く息を吐いて、目を伏せる。
明るくて、小さい子でも歌えそうな、それでいて意味の分からない歌詞を口ずさむ。
視線が辛いなんて、そんなこと…ないんだから。
あの某小隊の帽子を被るなんて、別に、辛くないんだもの。
精神的ダメージを食らいながらも、一曲歌い切り、マッチさんの足を見る。
見た目は問題ない。
「ちゃんと動きます?違和感とか、ないですか?」
「…ああ、問題ない。ありがとな。」
未だに座り込んだままの私の頭を優しい手付きで撫でて、マッチさんは笑った。
トリコさんと滝丸少年は私の戦闘を見ているから、その、いきなり歌い始めたことも問題ないと思う。
あと、鉄平さんも、メルトは見てたと思うから、そんなすごい目ではないはず。
与作さんと露出狂が、すごい目をしているかもしれないけど、きっとそれだけだ。
そう自分に言い聞かせて、立ち上がって、振り返る。
マッチさん以外の全員が驚愕していた。
「―んだよ、さっきの…―つくしくねー歌は!」
唖然とした露出狂の言葉は、この場を空気を凍らせるのには最適なそれだった。