胸うさ | ナノ



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「…ぃ、おい、氷雨!」
「ふわ、なんです?マッチさん。」

今は節乃さんのリムジンクラゲに乗っている。
シン、ラム、ルイの3人を不安そうに見つめていたマッチさんが、困ったように私を見つめていた。
それから、ぽんぽん、と頭を軽く、叩いてくれた。

「大丈夫だ、お前がそう言ったんだろ。」
「、うん。」

ああ、そうか、私は不安だったんだ。
もしかしたら、3人が起きないかもしれない、と。
ぎゅ、とマッチさんに抱きついて、額を押し付ける。
片手で抱き込まれて、その暖かさに安心するのがわかる。

「おい、マッチ!」

トリコさんが食べ物をマッチさんに投げる。
伺うように節乃さんを見れば、彼女は柔らかく笑って、食べなさいと告げた。
感謝する、と軽く頭を下げてから、マッチさんはそれを口に含んだ。
ふ、と彼の頬が緩む。

「あ、手伝います、」

立ち上がって、マッチさんに笑ってから、節乃さんに近づく。
やすんでなさい、と言われるが、首を左右に振って、それを断る。
彼女は少し眉を下げて、料理を運んでくれるか、と提案してくれた。
はい、と頷いて運ぶ。
が、それもそんなに時間のかかるものではないので、すぐに終わる。

「氷雨、来い。」

マッチさんに呼ばれ、1つ頷く。
それから、ふと、思い出した。

「…あ、っと…リーゼントさん。」
「ねえ、それまさか俺のこと…だよねぇ、」
「すいません、お名前をお伺いしていないので。3人と、マッチさんを助けて下さってありがとうございます。」

頭を下げる。
隣でマッチさんがふ、と笑ったのを感じ、見上げた。
優しい笑顔がそこにあって、勢い良く顔ごと逸らす、と、逸らした先には小松さん。
私たちのやり取りに苦笑していて、眉が下がる。
緑のリーゼントさんは特に何も言うことなく、不自然に黙っていて。

「あの、」
「俺、再生屋の鉄平、君は?」
「私は、氷雨です。一応、グルメヤクザってことになるんでしょうか?」
「お前は入ってねぇよ。肩書き的には、俺の秘書だ。」

その事実初めて知りました、とマッチさんに言えば、言ってねぇからな。と返される。
…くそう、なんだろう、この、負けた感じ。
そんな反応に苦笑しながら、ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
その姿をじっと見つめて、ふと、思ったことを口にした。

「マッチさんはやっぱりスーツの方が格好いいです。」
「ん?そうか?」
「そうです、マッチさんのスーツ姿は一番です。」

真剣に頷くと吃驚したようなマッチさん。
首を傾げて見上げると、小さく笑って、ぎゅう、と抱きしめられる。
吃驚するが、やはりそれ以上に安心する体温に抱きつき返した。


(「もしかして、僕たちのことって、」)
(「あの様子じゃ視界にすら入ってねぇな。(くそ、見せつけやがって。)」)
(「やっぱりー!!!」)

(「ゾンゲ様、俺たち空気っすね。」)
(「がはははは、いて当たり前の存在だからな!」)
(「意味が違います、ゾンゲ様。」))

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