胸うさ | ナノ



氷山到着

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翌日、私たちは出発した。
すごく強い風の中、一歩一歩着実に進んで行く。
ちなみに、さうは今日も私の胸のところに入っている。
暖かいんだよねー、さう。
獣が呻く声が聞こえた。
ぱっと前を見れば、そこにはフリーザパイソン。
滝丸くんとマッチさんが一頭ずつ倒す。
残りをトリコさんが追い払おうとするが、毛皮が足りないんじゃないかと思う。
ので、彼が威嚇する前に飛び上がり、髪をほどきながら薙刀を形にし、刺貫く。

後ろから、トリコさんの威圧を感じた。
と、同時に、一瞬にしていなくなるフリーザパイソン。
薙刀を抜き、綺麗に捌く。
捌いた肉は一瞬にしてさうの胃に消えた。
武器は元に戻し、髪も適当に1つにまとめた。
出来た毛皮を二つに裂き、1つを黒髪の背の低い青年に巻き付ける。

「これで寒さは凌げます。もう少しですから、頑張ってください。」
「あ、ありがとうございます。でも、貴女は。」
「私は大丈夫ですよ。」

にこ、と微笑む。
彼は暖かくなってきたのかほっとしたような表情を浮かべる。
そして気がついたように私を見た。

「あの、お名前は?」
「ああ!すいません、氷雨と申します。」
「ぼ、僕は小松って言います。よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそ。」

なんというか、街の少年少女を相手にしているときと同じ反応になってしまうんだが。
これは私の所為じゃないと思うんだ。
彼の反応とかが幼いからだと思う。
幼い…というか、受け受けしいというか…うん。
ふと気がついて、巻き付けた毛皮を開かないように、少し形を変える。

「?」
「これで、歩いても足元から風が入ることはないです。」
「わぁ!ありがとうございます!!」
「いいえー、もうちょっと頑張りましょうね。」
「はい!」

輝かんばかりの笑顔で頷いた彼に安心し、手元に残ったもう一枚をどうしようか、考える。
は、と気がついてマッチさんが裂いたそれと一緒に3人に持って行く。
三枚になった毛皮をラム、シン、ルイの3人に巻き付けた。

「大丈夫?」
「いや、お前のが寒そうなんだが…。」
「そう?まあ、指先は冷えてるけど、ほら、さうもいるし。」
「きゅー。」
「んな!お前、そこに入れるのはやめろって言われてんだろ…。」
「でも他に仕舞うとこないし…。」
「仕舞うって…俺に貸せ、俺が連れてくよ。」
「きゅー!」

籠った声が聞こえ、えーと言いながら、Yシャツのボタンを上3つ開けた。
胸元からぴょんとさうが飛び出し、提案したシンの肩に乗る。
きゅいきゅい、と嬉しそうに鳴くさう。
そんなに私の胸は居心地が悪かったのか…。

「さうー。」

切なくなって縋るように名前を呼ぶ。
すると、正面に居るシンが焦ったように顔を背けた。
なんだ?と首を傾げれば、そのまま怒られる。

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