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「お礼。」
「っ、…は?」
「場所…お礼。」
「これ、一頭くれるのか?」
こくり、頷く。
驚いたような4人は笑い始めた。
え、これ食べられなかったりするの?
匂いは…食べられる匂いだけど…。
「すまなかったな。」
「?何故?」
「…いや、なんでもねぇ。」
マッチさんに何故か謝られ、キョトンとしていると3人が頑張って、持ち上げようとしている。
…………嘘だろ。
マッチさんがそれを見て苦笑した。
「お前ら、それ、持ち運べそうか?」
「無理です。」
…いや、まさか。
軽いよ、それ、なんて言えない雰囲気。
だって、顔真っ赤にしてるんだけど。
うは、重力の違いだって、そういや、トリコの世界ってでかいんだよね。
人間界で地球の4倍くらいあるんだよね、確か?
で、グルメ界が世界の7割くらいだよね?
ってことは、単純計算で13倍?14倍?大きい訳だから。
まあ、重力はかなり軽いよね。
万有引力の法則を考えて…よく覚えてないけど、多分、重力も同じ位軽くなるよね?
もしかしたら、人間界のサイズがちがければ、もっと変わるけど…。
……物理は苦手だし、重力が軽いってことがわかればそれでいいよね。
でも、問題はそっちじゃないんだよ。
持ち運べないんじゃ、意味ないかなぁ…折角いいお礼だと思ったのに…。
しゅん、としてしまったのか、マッチさんが微笑む。
くそ、美形め。
「なあ、これを運ぶの手伝ってくれないか?」
『…なあ?』
「っ、」
首を傾げ、わからなかった言葉を日本語で聞き返したら、マッチさんがすごい勢いで顔をそらした。
え、何、発音が下手すぎた?
ってか、言葉じゃなかった感じ?
後ろで舎弟さん3人がこそこそ言ってるけど、そんな聞き取りできないから。
お願いだから、わかるように喋ってほしい。
とりあえず、手伝えってことだよね?と思いながら、それを担ぐ。
まあ、サイズがサイズだから若干引きずるけどね。
そのあと、彼らと一緒にネルグに帰った。
マッチさんの家の前でそれを切り分けて、少しずつ運び込んだ。
それから、彼らは料理があまりうまくなさそうだったので、私が代わりに色々やることになった。
毒でも入れないの心配なのか彼らの監視の下でしたが。
料理はどうやら4人に気に入られたらしく、街の子供たちにも分けることにした。
ニコニコ笑いながら配っていたら、子供たちにもだいぶ懐かれたように感じる。
「なあ、氷雨。」
「?」
「暫く、此処に居ないか?」
「此処?」
「ああ、俺といないか。」
「ん、よい。」
(「頑張れマッチさん!姐さんを落としてくれ!」)
(「料理美味いし、気遣いできるし、強い、きっと…いい奥さんに!」)
(「…強いのは関係なくねぇか?つか、気が早いだろ。」)