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「デス、ありがとう」
「いーってことよ」
ぱちん、とウインクしたその姿は絵になっている。
が、次の瞬間、私とデスの間には一直線に溝が生まれていて、私はディーテさんとシュラさんに両脇を固められた。
ん?!と思わず二人の顔を見れば、眉を寄せた表情で。
「え、っと、ディーテさん?シュラさん?」
「…いつ、だい?」
「え?」
「いつからアイツを愛称で呼んでいる?」
デスから目を逸らすことなく、二人が、私に問いかけてくる。
それに、食事を作っていて、ディーテさんが薬を、シュラさんがお皿を準備して下さっている間です。と正直に告げた。
デスが慌てたように二人に声をかける。
「シュラが氷雨って呼んだって話から呼び方の話になったんだからな?!」
「…俺、か?」
「そう言えば、そうだったね」
ディーテさんの視線がシュラさんに向いた。
注目されているその人は、少し考えるようにしてから、私を見る。
「これから、そう呼んでも?」
「あ、はい、勿論です」
目を細めて、1つ頷いた。
シュラさんは口元を少しだけ緩める。
「俺も、敬称はいらない」
「ちょっと、ズルい、それなら私も呼び捨てにして欲しい」
反対側からもディーテさんが私の顔を覗き込んだ。
どこか悪戯っ子のような楽しそうな笑顔は、私を頷かせるには十分で。
「その、これからも、よろしくお願いします…シュラ、ディーテ」
気恥ずかしさからか、目線を下げたままの私に、二人からの了承の声が返ってくる。
羞恥なのか喜びなのか、よくわからない感情で、私ははぅ、と情けない声を上げながら頬を押さえたのだった。