正義 | ナノ



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目を瞑って、と目の上に手を翳される。
暗くなった視界に、内心首を傾げながら、目を伏せた。
暫く経って、髪に触れられる。

「もういいよ」

目の前で綺麗に笑うディーテさんは鏡を持っていた。
ん?と首を傾げながらよく見ると、私の髪が、一輪の薔薇によって飾られている。
思わず驚いて何度か瞬くと、目の前の私も嬉しそうに瞬いた。

「よく似合っているな」
「シュラさん、ありがとうございます」

いつの間にか近くに居たシュラさんが少しだけ目を細めて笑ってくれる。
憧れの先輩に褒められたようなくすぐったい気持ちになりながら、笑顔を浮かべた。
自分自身が開き直ったからか、とても清々しい気持ちで笑える。
彼らに対して歩み寄ることが、きっと、出来ているように思うのだ。

「ディーテさんも、ありがとうございます」

穏やかで幸せな空気のまま、ディーテさんに視線を戻す。
彼は満足そうに頷いて、素敵だよ、と目を細めた。
似合わない、とか、私よりディーテさんの方が似合う、とか、思うことはあるけど。
それでも、褒めてもらえたのはとても嬉しくて、花をもらえたのも、認められた気がして、ほっとする。
だから、彼らの言葉や行動に純粋に感謝できたんだろうな、と一人考えた。

「3人で何やってんだ………氷雨、弄ってもいいか?」
「え?あ、はい」

一人で何かしていた様子のデスが近づいてきて、私の顔を覗き込んで、髪の毛に触れる。
一度薔薇が抜かれて、何をするのかと思えば、緩やかな三つ編みが作られていく。
それから、どう動いたのかはわからないが、とりあえず、社交の場に居ても可笑しくないくらいの髪型になった。
その素晴らしい髪をとめているのは、一本の薔薇で。
ぽかん、と口を開いてしまった。

「おぉ…」

感動しすぎて何の言葉も出ない。
思わず頷くようにして、鏡の中の自分をじっと見つめる。
自分の顔云々を除いて、髪型だけで言わせて欲しい。
めちゃくちゃ可愛い。
髪を弄ってくれた彼の顔を見上げた。

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