正義 | ナノ



073
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これはアレか、さっきの一般女性についてのレクチャーその2か。
思わず、ひくり、と頬が引きつった気がする。
とりあえず、料理したいな、なんて思っていることは内緒にして、ジクジクと痛む腕に眉を寄せた。

「あ、デスマスクさん、そのお鍋を一回強火にかけてもらっていいですか」
「これ、か?」
「そうです」

十分に水を吸わせただろうお米を火にかけてもらって、他の料理も指示をして進ませる。
こういうのはサラッとスルーして本来のことをするに限る。
一人頷いて、腕を見た。
赤くなって、所々に水ぶくれが出来ている。
結構な広範囲だが、程度は酷くない。

「ディーテさん、火傷の薬とかって、持ってたりしますか?」
「ちょっと待ってて、今捜して来る」

気がついたように踵を返したディーテさんを見送って、シュラさんとデスマスクさんに指示を出す。
ふと、さっき、シュラさんに名前で呼ばれていたことを思い出した。
嬉しさと、気恥ずかしさで、赤くなりそうな顔を見られないために、シュラさんにお皿を捜してもらうようにお願いする。
わかった、といいながらも、相変わらず不安そうなその表情に大丈夫です、と笑ってから、ふぅ、と1つ息を吐いた。

「どうかしたのか?」
「いや、先ほど、シュラさんに名前を呼ばれたことを思い出しまして」

苦笑しながらデスマスクさんを見れば、彼は、ああ、そうか、と一人納得したように頷く。
それから、こちらを見て、に、と口角をつり上げた。

「俺のことはデスでいいぜ?さん、とかくすぐったくて、かなわねぇ」
「…そこで、あえてのマスクさんでもいいですか」

ぽかん、とした表情と、それから、思わずといったように吹き出した彼。

「マスク、って、いや、いいけどよ。まず、さん付けを辞めろよ」

くく、と片手を口元に当てながら、目をきゅ、と細めた様子は絵になる。
エプロンをつけて、片手に木べらを持った彼は戦士になど見えない。
それから、こちらを見て、ふわり、と微笑んだ。
いつものニヒルな表情からは全く想像できないくらい、柔らかく、優しいものだった。

「俺は氷雨、って呼ばせてもらうが…いいだろ?氷雨?」
「ええ、勿論ですよ、デス」

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