正義 | ナノ



033
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…とりあえず、明日、仕事前にゴミ袋とぞうきん持ってくることにしよう。
じゃないと片付きそうにもないし。
コンコン、ノックされる。
扉を開けると、そこにはカノンさん(多分)がいた。
もしかして、と時計を見れば18時。

「わかったみたいだな」
「はい、お手数をおかけしてしまいました。すいません」
「いや、構わないさ」
「ああ、じゃあ、ご迷惑ついでに頼み事してもいいですか?」

そう言えば、ああ、と頷くカノンさん(多分)。
その手に、発見したエロ本と書類を置く。

「書類の方は確認しておいてください。まあ、本の方は持ち主がいらっしゃると思うので、探していただければ」

捨てちゃってもいいかと思ったんですけど、勝手に捨てるのもどうかと思ったので。
そう続けると彼は、はは、と乾いた笑いで頬を引きつらせた。

「わかった、なんとかしておこう」
「ありがとうございます」

うん、反応が何となくカノンさんっぽい。
申し訳なかったかなと思いながら笑っておく。
カノンさんは驚いたようにしながらも、構わないさ、と私の頭をぽんぽんを撫でた。
そんなことされたら照れてしまうじゃないか、イケメンが。
と思いながら、少し目を伏せる。
頬が赤くなる前にどうにかしなくては、と思ったとき、カノンさんの後ろから声が聞こえた。

「よお、新人」
「…なんでしょう、デスマスクさん」

にこり、営業スマイルを向ける。
不機嫌そうに眉をしかめた彼は、近づいてきた。
カノンさんが不審そうに私の前を開ける。
左手の二の腕あたりを掴まれる。
ちょ、前世よりは細いけど、自慢できる程の細さじゃねぇんだからな!
なんて思っても口には出さない。

「何ですか?」
「アンタの話が聞きたいと思ってな、俺の宮にこねぇか?」
「そうですね、とても魅力的なお誘いだと思いますが、私にはやらねばならぬことが多いので」

申し訳ありません。
穏やかに見えるよう、極力優しげに微笑む。
不機嫌そうな男は顔を変えない。

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