正義 | ナノ



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お買い物に行きたいなあ、と思っていたところディーテが降りると言うことなので、一緒に連れて行ってもらった。
けれど、帰りに金牛宮に到着したところでディーテが日本に飛ばなくてはならなくなったらしい。
マジ?と言いながらも、その場にいたアルに私を託し、彼は気をつけて帰るんだよ、と私を子供扱いしてから多分テレポーテーションでいなくなった。
…正直テレポーテーションでいなくなっても、光速で走り出してもどっちかわからないんだけども。
目の前からいなくなったらテレポで良いかなって思ってる。

「突然こんなことになってごめんなさい」
「いや、気にするな」
「私ももっと体力つけられればいいんでしょうかね」

困りものです、とアルを見上げながら告げれば、そのままでも十分だと思うぞ、と返されて。
コーヒーを飲もうとしていたところらしく、一緒に飲まないか、と誘われた。

「コーヒーとマテ茶とガラナしかないが…どれが良い?」
「ザ・ブラジルって感じですねー…一応、どれでも大丈夫です」

ブラジルには行ったことはないが、一応どれも大丈夫…なはず。
コーヒーはエスプレッソにめっちゃ砂糖入れるとか聞いたことはあるが、別に甘いのが苦手なわけではないし。
マテ茶も別に問題なく飲める。
ガラナはいつ飲んだかは思い出せないが、飲んだことがあるから味はわかっている。
じゃあ、と勧められた椅子に座り、アルを待つ。
大きめなマグカップでコーヒーが出てきた。
思わずパチリ、と瞬いて両手でカップを支える。

「アルが大きいからですね」
「…すまん」
「いえいえ、謝るようなことじゃないですよ。ご馳走になりまーす」
「ああ」

一口飲むと、あー、これどっかで飲んだことはあるわあ、という味がする。
どこで飲んだんだか全く思い出せないので、もしかしたら、私じゃなくて“わたし”の時に飲んだのかもしれない。
多分、ガラナもそうなんだろう。
と、目の前の椅子に座ったアルがそれでも大きくて、思わず、考え事が口からこぼれた。

「私も体が大きければ体力ももっとついてたんでしょうか」
「そのサイズでも十分だと思うが…」
「一回アルになってみたいですね、どんな世界が見えてるのか気になります」

私の言葉にアルは変な顔をしてから笑う。
楽しいもんじゃないぞ、というのは聖闘士としてのアルを考えているからだろう。
違うのだ。

「高いところからだと、もっと色々見えるのかなぁ、と思いまして」

私の言葉に想定外のことを言われた、とわかりやすく表情に出してくれた彼を見つめる。
日本人の平均身長くらいである私と、2m越えの彼の身長では明らかに見えるものは違うはずだ。
小さな頃にとても大きく見えていたものが、成長していくにつれてとても小さなものに見えるように。

「前の時もほとんど同じ身長だったせいか、たまーに、わからなくなるんです」
「氷雨、」
「もっと大きくなれたら良かったんですが」

なんだか重たい感じで言ってしまった、と慌てて取り繕いながら、コーヒーをもう一口。

「コーヒー淹れるの上手ですね」
「そうか?」

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