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部屋で作り上げたお団子を味見しながら待つ。
…うん、美味しい。
満足していると、ノックが響く。
扉を開くと、シャカさんがなんとも言えない微妙な顔、と言えば良いのか、口元がちょっとへの字をしていた。
「シャカさん?」
「君が誘ったのは構わないが…あの男はなんなのだ」
「え」
何か問題でもあったのだろうか?
首を傾げてみれば、なんでもない、と首を振ったシャカさんがみたらし団子を持った私を抱き上げた。
じっと顔が団子の方を向いているシャカさんはなんともまあ、欲望に正直といいますか。
そのまま案内されたのは、処女宮の生活区域だった。
お茶の準備ができているその場所は、生活感の感じられない場所だ。
綺麗、というわけではなく…そうだな、散っているものを全て片付けた部屋で必要なものも全部仕舞ってしまったといった感じ。
「じゃあ、お茶にしましょうか?」
「ああ!」
「…君が答えるのか」
行儀よく座って待っているリアの返事に、シャカさんがため息をつく。
傍若無人なのはシャカさんだと思っていたのだが…そんなことはなかったらしい。
若干程度だった申し訳なさだったものが、山のように募る。
いや、まさかこんなことになるとは夢にも思わず。
ついついシャカさんから目線をそらしてしまった。
みたらし団子をテーブルに置いて、シャカさんに勧められたリアと対角になる席に座る。
茶器を持ってきたシャカさんが私の向かいでリアの隣に座って、丁寧な、そして洗練された動きでお茶を淹れてくれる。
動きを見ているだけで楽しいのは、きっと私だけではないはずだ。
沈黙の中、茶器の触れる小さな音だけが響く。
「できたぞ」
「ありがとうございます」
「…すごいな」
小さく笑って受け取れば、斜め前のリアが感心したように告げた。
シャカさんはその反応を誇るような、それでいて厭うような、なんともわかりづらい動きを見せる。
見せるつもりもなかった相手に感心されても…ということなのだろうか。
気にしなくてもいいかな。
意識を変えるように、すっ、とシャカさんへみたらし団子を差し出す。
まっすぐと手を伸ばした彼はそのままもぐもぐと口を動かし満足そうに笑った。