正義 | ナノ



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三巨頭のうちの二人はシオンとアイオロスの前に立ち、対等に話を始めた。
内容はいつも通りの内容の定期報告だけだった、だが、ふとした拍子に覚えのある香りを感じた。
覚えのある香り、というのはおかしい表現かもしれない。
感じたそれは小宇宙であり、香りではないのだが…そういう感覚で、それ以上の説明が難しいものだ。
例えば、リゾットと雑炊の違いというか、近い何かなのだが、本来は全くと言っていいほど違う。

「では、今日の報告会は以上とする」

思考に沈んでいれば、会議は終わった。
彼らを下まで送るのは白羊宮に住む私の役目、面倒だが、それを放棄するつもりはない。
仕方ない、と入り口で立ち止まっていれば、片割れが突然ふ、と視線を執務室の方へ向けた。
が、すぐにこちらへと歩いてくる。
にこりと胡散臭い笑みを浮かべて、彼は私たちを促して教皇宮から外へ出るまで一番後ろでゆっくりと歩いていた。

「おや…忘れ物をしてしまいました…少し、失礼いたします」
「おい!ミーノス!!」

彼はそのまま踵を返して、来た道を戻っていく。
忘れ物をするほどに何かをしていた記憶もないが、しばらく待とうとその場で待機することにした。
…のだが、

「まだか」
「…遅いですね、見に行きますか?」
「ああ」

苦労人だろうその姿を見て、私たちはゆっくりとその道を歩く。
肩を並べて歩くことは勿論せずに、彼が私の一歩後ろをついてくる。
歩きながら、彼の小宇宙を探った。
そして、気がついた瞬間に、私は走り始める。
ついてきていた彼も同じなのだろうか、私に少しも遅れることもなく、その場に到着したのだ。
目の前にいたのは、不思議そうな彼女と何かを企んでいそうだとわかる冥界の男。

「無事ですか」
「第一声でそれはいくら何でもあんまりではありませんか」
「それくらいが妥当だろう。お嬢さん、大丈夫か?」
「お嬢さん…ええと、彼には道を聞かれてここまで案内しただけなので」

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