正義 | ナノ



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「お、落とさないでね?!」
「…落とすと思ってんのかよ?」

呆れたような、いつもの顔でデスが声を上げた。
いつも通りに戻ったことにホッとして、口元だけで笑ってみせる。

「んー…聖闘士だって人間でしょう?」

万が一がないとは言い切れないと思うんです。
そう続ければ、なんとも苦い顔をしたデスがそれもそうだな、と返しながら何故だろうか、階段を降りている。

「ん…?」
「どうした?」
「えっと、シュラ…なんで階段を降りてるんでしょうか?」

このまま行くと確実に双魚宮に行くことになるのではなかろうか。
首を傾げて問いかけるが、あいにくと返事をしてくれる気はないらしい。
ただ、どことなく硬い色を残したままのシュラに不安が残る。
二人に連れられて双魚宮を超え、宝瓶宮も越え…到着したのは磨羯宮の住居区域だった。
…うん?確かに休みの日とかご飯の日とかよくここにきてるけど。
疑問符を浮かべながら二人の顔を見つめる。
ソファーに座らせられて、両脇をガッチリガードされた。
が、若干デスの方が余裕がある、というか表情的にもシュラが固すぎるのが怖い。
なに、私何かした?
とりあえず、どうにかするにはええと…甘えてみるのが一番、かな?
年中組の3人は私のこと甘やかしたがりっぽいし、うん、そうしよう。
これが外れたら次はどうすればいいかわかんないけど、当たって砕けろ戦法でいくしかない。
右手でデスの服の裾をちょっとつまんで、頭をシュラの方へと倒す。
ビクっと体をはねさせたシュラを気にせずに口を開く。

「今日シュラの得意料理が食べたい」

その肩にグリグリと額を押し付ければ、戸惑いがちに私の頭に手が乗せられる。
ぎこちなく撫でられるのに甘んじようと気恥ずかしいのをじっと堪えた。
仕事残ってるんだけど、それをどうのこうのって言ったらまた逆戻りしそうじゃね?どうすればいいのこれ。
いっそのこと今日のこれ以上の仕事は諦めればいいの?
まあ、明日に回しても問題ない量ではあるんだけど。
なんて、思っていたら、仕事をわざわざ執務室まで取りに行ってくれたらしいディーテが呆れたようなため息とともに部屋に入ってくる。

「まったく…二人とも落ち着いたらどうだい?」

ディーテのその言葉を二人が受け入れてくれたのは、シュラが夕食を作るためにキッチンへ向かう数時間後だった。

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