正義 | ナノ



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ミロさんは嬉しそうに私の手を取って、仮眠室の方へと引っ張る。
それに引っ張られるように連れて行かれながらも、メモとペンは忘れず手に持った。
かわいいなぁ、と口元を緩めて、そのまま仮眠室でミロさんと一時間くらい話をする。
そろそろ仕事に戻らないと、と椅子から立ち上がれば、彼がニコニコと笑いながら小指を立てた手を差し出す。

「日本では約束する時に、指切りってするんだろ?」
「ふふ、そうだね」

男らしい指だと視覚的には認識できているのだが、どうしても脳内では幼いそれにしか見えない。
絡めた指は普段とは逆のアンバランスだが、それでも気にならない。

「約束ね?」
「おう」

嬉しそうに頷いたミロさんはそのまま口の前に指を持って行き十字架を作る。
みてみて、と言っているのか、彼はこうやって、と説明を始めてくれた。
どうやら、ギリシャ式の約束の仕方、らしい。

「こう…?」
「そうそう!で、この手を」

見たままにやって見せれば、ミロさんは満足そうに笑った。
それを見てから二人で執務室へと戻る。
席はすでに離れた位置に座っていたので、そのまま席を変えることなく、仕事を始めた。
仕事前にリラックスできたおかげか、大分調子が良く進められそうだ。
いつも通り、外からの音を一切排除して、世界を切り離す。


「…ふぅ、」

一気に終わらせた聖域の仕事に、ため息をつく。
懐中時計を見れば、大分テンションが城戸邸にいた時に近いのだろう、おやつの時間だ。
休憩するか、と首を回しているとふと視線を感じる。
ん?とそちらを見ると、なんとも言い難い顔をしてシュラがこちらを見ていた。
あ、今日夕食当番だから私の希望でも聞いてくれるつもりなのだろうか。
そう思って、シュラと目を合わせてから、仮眠室を指差して首をかしげる。
一拍おいて首を左右に振った彼は執務室の出入り口の方を指指した。
外の方が話しやすいということだろうか、と頷いてから立ち上がった。
と、隣から肩に手を置かれて、確かデスがいたはず、と顔を上げれば、赤い瞳が私を若干険しい色で見ていた。
えっと…?
表情と態度で疑問を示せば、そのままなんの返答もなく抱き上げられて、言葉を失う。
なんだか様子がおかしいのだが、一体どうしたのだろうか。
そのままシュラが開いている扉から無言のまま連れ出されて、いや此処くらいは私歩けるけど、なんて思いもするのだが…。
なんだろうか、彼らがとても戸惑っているように見える。
とりあえず、時間が経たないとわからないか、と甘えるように体をデスに預けた。
一瞬その腕がぴくり、と動いて、驚いてその肩を掴む。

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