正義 | ナノ



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人馬宮に到着すれば、そのまま生活区域に運び込まれ、木材で作られた手作り感のある椅子に座らせられる。
二人がけのテーブルの横に一つ同じような椅子を持ってきて、そこに射手座が座った。
と、いうことはわたしの正面の椅子には獅子座が座るのだろう。
ちらり、とその場から部屋の中を見回すと、年中組の部屋とは違い、手作りや木材で作られているものが多いように感じる。
…部屋の中には結構人となりが現れるものだな。
獅子座が勝手知ったると言いたげにキッチンへ消え、すぐに紅茶と包装紙に包まれた菓子類を持ってくる。

「あれ?俺の作ったお菓子は?」
「カノンが三巨頭のワーカホリックを気絶させてでも止める術として冥界に送った」
「…劇薬扱い」

獅子座の淡々とした、普段よりも数倍淡白な反応が怖い。
冥闘士が食べたら気絶するお菓子って一体なんだ。
絶対食べたらいけないもの入ってるだろ、ひやりと冷たいものが背筋を流れた。
そう考えると、人馬宮では包装紙に包まれているものが確実に食べられるものであるという安全の証明になるのだろう。

「…射手座は、味見をしているのか?」

だから、つい、口にした。
その言葉に射手座が嬉しそうにこちらに視線を向ける。
反射的にしまったと思い顔をそらす。

「俺に興味持ってくれた?」
「嬉しそうに言うな」

顔をしかめて告げる。
しかも、重要な答えがわからない。
料理やお菓子を劇薬に変えることができるのは、ある種才能だろう。
しかも以前聞いたところによると見た目は普通というから、きっと調味料によるミスなのだろうが…。
はあ、と一つため息をついて、無骨なマグカップに手を伸ばす。
ミルクティーが淹れられているそれを軽く持ち上げ、獅子座にいただくぞ、と一方的に声をかけ口をつける。
一緒に出されているのが市販の菓子だからだろうか、砂糖はほとんど入っていないようだ。
ニコニコしていた射手座が少し驚いたようにパチリと瞬いた。

「…なんだ?」
「いや…氷雨はリアが苦手なのかと思ってた」
「別に苦手でも嫌いでもない、似ているだけだ」
「…誰に、だ?」

獅子座がまっすぐにこちらを睨みつけるように見てくる。
マグカップを机に置いて、ちらり、と流し目でそちらを見ながら答えた。

「“私”…分かりやすく言うのなら、射手座のいう“氷雨ちゃん”の方だな」
「彼女と…俺が?」

その言葉には無言で返す。
そもそもそういったばかりなのだから、それをもう一度繰り返す必要はない。

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