正義 | ナノ



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だから、関わることを許してくれますか?
目を細めて笑えば、不思議そうな顔。

「?」
「ああ…わかりにくいですよね、どう説明しましょうか」

カバンの中から真っ白な紙を取り出して、大きくハート形を書く。
それからハートを逆三角と上の膨らんだ部分二つの、計3つに分ける。
逆三角の部分に私、膨らんだ部分の片方に“私”、反対に“わたし”と書く。

「私の基本精神状態はこんな感じになっておりまして、」
「どういうことだ?」

カノンさんがサガさんの隣に座り込んで、一緒に覗いてくる。
へらり、とその顔に笑ってから、三角の部分の私の下に共有、“私”の下に今世、“わたし”の下に前世、と追加する。

「共有部分はいつもの私です。が、元々は“私”と“わたし”は別人格レベルでして」
「え、」
「“私”は“わたし”が嫌いで、昔はこんな感じで…」

言いながら、ハートを二つに割る。
しみじみと昔のことを思い出そうかとも思ったが、未だに“わたし”は知らせる必要はないことは教えてくれない。
それは多分、この世界に生きるのが私だからなのだろう。
“わたし”は登場人物の彼らことをどうしてもキャラとしか受け入れられないのだ。
だからこそ、決してその感情を表に出さないため、私には教えない。
“わたし”部分をくるくると囲む。

「ここに、前世の情報と一時期半々になって荒れてた時期のことが詰まってるんです」
「そう、なのか…」
「…待て。普段のお前に前世の人格も含まれているのか?」

納得したようなサガさんに、疑問が出てきたのか眉間にしわを寄せるカノンさん。

「はい、というより、前世の記憶が指針ともなっていたので、それに従っている分、前世の思想や性格も引き継いでいます」
「なのに、すべて共有はしていないのか?」
「最初は、そうじゃなかったんですけど、くっきり分かれたあたりから思い出せなくなったんです」

“私”の記憶として必要ないから“わたし”に押し付けたんだと思います。
苦笑しながら、サガさんの顔に笑いかける。

「今でも覚えているのは、“わたし”の時は“サガ”さんに好感を持っていたということや、話の全体的な流れくらいなものですが…“わたし”の方であれば、未だにみなさんの登場人物としてのデータは覚えていると思います」

身長とか、必殺技とか、そういう私が皆さんに聞いていないことも含めて。
若干申し訳ないと思いながら、告げればぽかん、とした顔がこちらを向く。

「本当に、全部知ってるんだな」
「いえいえ、書いていないことは知りませんし、知らないことの方が多いですよ」
「…三人で、なにをしてるんだい?」
「あ…アイオロスさん」

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