正義 | ナノ



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窘めるような口調に、申し訳なく思いながら、荷物と反対の腕に抱き上げられる。
安定感抜群だと思うのだが、視点がいつも以上に高いのが不安を呼ぶ。
座るような体勢で持ち上げられて、彼の肩の部分に掴まった。
…うん、端から見て子供抱き状態なのだろうとは理解している。
そのままで金牛宮まで向かうと、ムウさんが出迎えてくれた。
此処は金牛宮であって、決して白羊宮ではないはず。
なんて思いながらも、アルデバランさんに下ろしてもらい、こんにちは、と挨拶をする。
こんにちは、と柔らかく返してくれるムウさんが荷物を軽々と持ってくれた。
そのままキッチンは此方です、と案内してくれる。
…いや、いいんだけど、いいんだけど、何か違うと言うか!

「氷雨、楽しみにしてるぞ」
「はい!」

後ろからかけられたアルデバランさんの声に笑って返事をして、ムウさんとキッチンに入る。
さて何から作るべきだろうか。
と、その前に献立をしっかり決める方がいいのか。
キッチンにあるものは全て使っていいとムウさんに言われた。
どうやら、ある程度食材を持ち寄ってくれたらしい。
何とも有難い。
流石に全部私負担だと…また明日買い出しに行かなくてはならなかっただろう。
聖闘士…恐ろしい。

「それで…氷雨、」
「はい?」

何が作れそうかと材料を見ていたら、後ろからかけられた声。
なんだろうかと思いながら、振り向くと、ムウさんが近くにいた。

「ッ!?」

予想外に近すぎて、ビクッと肩を跳ねさせてしまったが、ふう、と一度深呼吸。
ムウさんも私の反応に驚いたように目を丸くしていた。
すみません、と軽く謝罪してから、用件を聞く。

「どうかしましたか?」
「…その、“煮物”の作り方を教えてほしいのです」
「え?」
「どうやらあなたの作った“煮物”をシオンが気に入ったらしく…」

その言葉に少しだけ驚くが、素直に喜ぶことにした。
嬉しさに口元を緩めて、勿論良いですよ、と頷く。
ありがとうございますと軽く頭を下げてくるムウさんに、へらりと笑いながら煮物に使えそうなものは…と辺りを見回す。
うーん…でも肉じゃがが好きってことはどちらかと言えば甘い方が良いのかな?
じゃがいものほくほく感も大丈夫そうだったし…なら、カボチャの煮付けとか?

「じゃあ、先に煮物の下準備を始めましょうか」
言いながら野菜の方へ近寄る。
色々みながら、目当てのものを見つけて、問いかける。

「カボチャ、食べられます?」
「ええ」
「じゃあ、これで作りましょうか」

笑いながら調理を始める。
いつも通りに、ただし、手早く進めていけば、ムウさんも何処か面白そうな顔をして一緒に手伝ってくれた。
最後の最後まで一緒にやってくれて、感謝を告げれば、彼は首を左右に振る。

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