正義 | ナノ



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首を傾げながら、お弁当を持って、仮眠室に向かう。
仮眠室に入り、お弁当を食べ始めると、視線は特に感じない。
……幽霊?やっぱ幽霊?
ゾワゾワと鳥肌が立っている腕を何度か擦って、眉を寄せた。
まあ、気のせいかもしれないし、と早めに食事を食べ切って、執務室に戻る。
帰った頃には視線は無くなっていて、やっぱり気のせいだったのかもしれない、と一息つく。
ついでに淹れた紅茶を多分休んでいないだろうサガさんとお礼の意味も込めてカノンさんの机に置いた。
一度、お弁当を置いてから、もう一度仮眠室に戻り、執務室にいる他の4人分の紅茶を淹れる。
…まあ、飲みたくないなら放置してくれるだろう。
なんて、甘い見通しを立てて、ミロさんとリア、シャカさんとカミュに一言かけた。
返事を求めてはいなかったので、そのまま自分の席に戻って仕事を始める。
終業時間に近づく頃、ちらりと両脇を確認する。
予定より進んでいるのを見ると、どうやら徐々にではあるが、慣れてきたらしい。
まあ、3日間反復していれば、そうもなるだろう。
ただでさえ、元々はハイスペックである聖闘士なのだ。
自分の机を片付けていると、執務室にディーテが顔を出す。

「氷雨?準備できてるかい?」
「あれ?まだ終業時間じゃないですよね?」

ぱちり、ぱちり、瞬いて首を傾げてみる。
いつも通りの綺麗な笑顔を浮かべてディーテは頷いた。
私の座っている机に向かって近づいてきた彼は、ばん、と机に手をつく。
それから、少し怖い顔をして、私の目を見つめた。

「今シュラが風邪の引き始めにいい食事作ってるから、早くおいで」
「え、」
「君は仕事を優先し過ぎだよ、もう少し休んだっていいじゃないか」

そんなことないですけど、と言いたいが言えない。
カノンさんの二の舞になる気がする、というかもう手遅れな気がする。
視線を泳がせてから、ディーテをじっと見つめる。
麗しい顔で、にっこりと、まるで回りに薔薇でも背負っているかのような美しい笑みを浮かべた。
それから、男らしいとは言え、どちらかと言えばほっそりとした指で私の顎をすくう。

「倒れたりしたら、わかってるね?」

ゾクリ。
ともすれば、うっとりとしてしまいそうな甘い声で囁かれる。
が、目が笑っていない。
壊れたブリキ人形のように何度も頷いて、机の上をちゃっちゃと片付ける。

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