正義 | ナノ



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白羊宮に戻ると、何故か眼鏡をかけたシオンさまがにこやかに迎えてくれた。
驚いて、ぱちりと瞬くと、シオンさまは弾んだ声で、私たちに話しかける。

「そうしていると、まるで家族よな」

唐突な言葉に、意味が理解できなかった。
一拍おいて、ああ、家族か、と納得する。
確かに、よく漫画などに書かれる家族は子供を中心に両親が両脇に立っている。
二人兄妹である私は、間に挟まれた所で片方は兄だっただろうか、とふと思い起こした。
生憎と、両親たちが前を歩いているのを兄と二人で眺めていた記憶しか出てこなかった。
軽く頭を振ってからシオンさまに笑いかける。

「でも、そのためにはシオンさまも入らないとですね」
「私がか?」
「私よりも必要だと思いますよ?」

師弟のつながりは、氷河君や紫龍君でよくわかっている。
他の皆のお師匠様には会ったことがないから、完全ではないのだろうけど。
私の火傷の跡を治そうとしてくれたシオンさまや、色々気遣ってくれるムウさん。
それに、笑顔が可愛い貴鬼くんは、私から見れば、十分に家族なんじゃないかと思う。

「ムウ様とシオン様がおいらの家族?」

首を傾げて見上げられる。
可愛い反応に、口元を緩めて、視線をあわせるためにしゃがみ込んだ。

「もしかしたら、聖域全部が大きな家族かも?」
「聖域、全部が?」
「そう、女神も、教皇も、聖闘士も、神官も、女官も、雑兵も、全部」
「…お姉ちゃんも?」

純粋な言葉で問いかけられたそれに、驚いて。
それから、にこり、と笑ってみせた。
貴鬼くんの頭を丁寧に撫でて、立ち上がる。

「ふふ、ありがとう」
「ところで、今日はどうかされましたか?」

ムウさんがシオンさまに問いかけた。
声をかけられたシオンさまは一度ぱちりと瞬いて、にこり、笑う。
その反応にムウさんが眉を寄せたのが見えた。
…何故だろうか、あまりいい予感がしないのだが。

「なに、簡単なことよ」

昼食を共にしても構わんか。
わざとらしい口調でそう告げて、シオンさまは楽しそうに笑った。
思わずムウさんと顔を見合わせて、眉を下げる。
向い合った彼は深々とため息を吐いていた。
それから、その言葉にムウさんが肯定を返して、そのままキッチンの方へ向かっていく。
手伝おうかとあと追いかけたのだが、その前にシオンさまに声をかけられた。
シオンさまの声で振り返ったムウさんが微笑んだ。

「あなたはシオンと貴鬼の相手をしててもらってもいいですか?」
「あ、はい」

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