正義 | ナノ



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緩やかに微笑んだムウさんに、何となくホッとした。
完全なリラックスモードに入れそうだ。
お茶を飲むために仮面を外そうと手をかけたそのときだった。

「ムウ?こんな所で何をしてるんだい?」
「…アイオロス?」

ムウさんの言葉に思わず手が止まる。
アイオロスさんが、おや?と言いながら、私に怪訝そうな視線を向けてきた。

「ムウも隅に置けないな…と、思ったが、もしかして彼女は、」

首を傾げる彼は、何処か幼い雰囲気を見せている。
こくり、と頷いたムウさんに促されるようにして、仮面を外した。
驚いた様子は見せず、ただ、私を見てぱちりと一度瞬くアイオロスさん。
その反応に首を傾げる。
感情が全く表に現れていないのが、すごく怖い。
私に無関心であるのか、それとも、私に感情を見せるのを拒んでいるのか。
どちらかはわからないが、負の感情さえ浮かんでいない彼の笑顔に、無意識のうちで距離をとろうとしていたらしい。

「どうかしたかい?」

優しそうなのは声の調子だけで、だからと言って、観察するような視線も無い。
此処に居ることは認めるが、それ以上に踏み込むつもりは無い、というアピールなのだろう。
ただ、私と関わり合いになりたくないだけか。
なるほど、と目を伏せて、口元に笑みを浮かべる。
関わり合いにならなくても構わない、ただ、仕事さえしてくれれば、それでいい。
少しだけ顔を背けて、眉を下げる。

「いえ、その…服装が、」
「そういえば、どうして上裸なんです?」
「ああ、水浴びでもしようかと思ってね」

朗らかに笑った彼は、泉に向かっていった。
その姿をぼんやりと視界に入れてから、お茶を飲む。
喉を通る暖かさが、酷く、不快に感じてしまった。
一度目を伏せて、深呼吸をする。

「お姉ちゃん?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、丁度目に光が入って、眩しくて」
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