正義 | ナノ



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その提案に思わず、瞬いた。
当たり前の上、説明されていたけれど、12宮の外にはまだ聖域は広がっているのだ。
そんな当然のことにまるで意識が回っていなかった事実に気がついて、思わず口元を抑える。
視野が狭くなり過ぎじゃないだろうか、私。
疲れているのか、仕事しか見えていなかったのか、それとも、性格的な問題か。
どれにしても視野が狭いのはいいことではない。

「…どうかしましたか?」
「いえ…自分自身の視野が狭くなっていたことに気がついて」

此処に来てから、実はまだ、2週間…経ってない。
だが、その2週間はかなり濃かった。
それでいて、ほとんど同じ人としか関わらずにいた。
日本に居たときも引きこもりではあったものの、定期的にパーティーとかそういうのあったからテレビとか新聞を確認、していたし。
…待って、私、今、世界から隔絶されてる状況にない?
2週間、テレビも新聞も、外界の情報に触れてないんだけど。
グラード財団内の情報は知っていても、それ以外を知らなかったら、ダメすぎる。
なんで気がつかなかったんだろう。
体中に鳥肌が立った。
2週間で気がついてよかった。
これで、一ヶ月後とかだったら、本当に問題が起きてたに違いない。
くい、と服を引かれ、視線を向けると貴鬼くんが首を傾げて私を見ていた。
…貴鬼くん大きくなったよなぁ、前は私のお腹くらいだったイメージなのに、もう肩辺りになっていて。

「どうしたの?」
「新聞を、読んでないと思ったの」
「新聞?いつもムウ様が読んでるよ?ねえ、ムウ様?」

その言葉にムウさんがええ、と頷いた。
読みますか?と言われ、思わず口元を抑える。
ゆっくり頷いて、お願いします、と続けた。

「あ、でも、聖域内…12宮の外にも行ってみたいです」
「なら、午前中は聖域内を見て、午後は白羊宮で新聞を読まれてはいかがですか?」

口元に笑みを浮かべながらの提案に、ありがとうございます、と頭を下げる。
じゃぁ、まずどの辺りに行ってみましょうか、と彼は少し考えるように告げた。
その言葉に貴鬼くんが弾かれるように声を上げる。

「オイラお姉ちゃんが喜びそうな場所知ってます!」
「では、案内は貴鬼に任せましょうか」
「貴鬼くん、よろしくね」

元気よく頷いた彼は、じゃぁ準備して早く行こう!と私の手を引いた。
準備?と首を傾げたが、ムウさんが飲み物を準備しているのを見て気がつく。
それから、一応、と仮面が渡された。

「今回はコロシアムや訓練所には行かない予定ですが…雑兵が見回っている場合もあります」
「混乱を避けるため、ですね」
「ええ。女官は服装が決まっている上、下に降りる場合は神官が付くことになっていますので」

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