正義 | ナノ



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「あの、此処にいても?」
「ええ、大丈夫ですよ」

こくり頷いて、繋がった電話に対応する。

「もしもし、白雲氷雨です。城戸一輝の保護者として、三者面談に。…はい、そうです」
「ええ、まあ、今ちょっと仕事の都合で海外にいるもので…お手数をおかけしてしまって申し訳ありません」
「それで、日程なんですが、6月20日にお願いしても?時間は構いません。一輝君に伝えていただければ」
「ありがとうございます。では、三者面談のときに…はい、失礼します」

受話器をおいて、ふぅ、と息を吐いた。
もうね…本当に、電話は嫌いなんだよね。
敬語とか苦手だし、相手の顔見えないからいつもより、溜息とかに敏感になるし。
椅子に背を預け、脱力する、とムウさんが不思議そうな顔をしていた。

「ムウさん?」
「あの、三者面談とは、なんですか?」

首を傾げながら、問いかけられる。
ぱちりと瞬いて、口元に笑みを浮かべた。
よかった、電話について聞かれなくて。

「進路を決めたり、普段の生活態度を振り返ったり、を保護者と生徒と先生で話し合うこと、ですかね?」
「何故ですか?」
「え、」

思わず、思考が停止した。
何故?何が何故?
話し合うことが何故、っていう解釈でいいんだよね?

「そう、ですね…」

まとまりませんが、と苦笑してから、言葉を口にする。

例えば、学校での生活は荒れていても、普段家では弟や妹の面倒をよく見ているかもしれません。
生徒は部活重視で進学を決めたいと思っていて、でも、親は学業重視で学校に行ってほしいと思っている場合も。
家では素直な良い子で、引っ込み思案でも、学校では少し問題児になりかけているムードメーカーの子。
人は色んな面を持っていて、そして、子供は親の庇護下にあります。
だからこそ、話し合う必要があるんだと思います。
子供は本当はどう思っているのか、親は何を考えているのか、学校と言う立場からはどうなのか。
真面目に話すには、なかなか機会が出来ないので、そう言った方法で機会を作っているんじゃないかと。

「意志の統一、ですか?」
「そんなに立派なものではないですし、正直、有意義な三者面談は少ないですけど」

普段の成績とか、内緒にする子供も多いんですよ?
肩をすくめて、告げれば、何となく真顔になって彼はじっと私を見てくる。

「どうかしました?」
「…いえ、此処でも、三者面談をする必要があるのかもしれない、と」
「三者面談を、ですか?」

そういえば彼はこくりと頷いた。
今までの聖域をご存知でしょう?と言われ、ふと思い返す。
サガの乱とか?ってことなのかな。

「確かに、面談とカウンセリングが必要そうではありますよね」
「…カウンセリング、ですか?」
「ええ、カウンセリングです」

私の言葉にきょとんと首を傾げたムウは、どこか子供っぽさを感じさせる。
さらさらと流れる紫色の髪が綺麗すぎて嫉妬してしまいそうだと思った。

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