ひとり | ナノ



01


生まれてすぐはどうだったか知らない。
だが、周りを認識できるようになったとき、周りに親はいなかった。
いや、今となって親と言う存在が本来”あるべき”だと知ったから、そう言える。
その頃は、それが当たり前だったし、何も思わなかった。
というより、思える心すら持っていなかった。
そもそも、心の存在すら信じていなかったといってもいい。
寂しいと言う感情を知ったのも、嬉しいと言う感情を知ったのも、すべては12歳のとき。
…多分だが。
自分自身が何処で生まれたか知らず。
親と言う存在を認められず。
甘えなどと言うものも感じず。
本から知識として、様々なこと知っただけで。
俺はそれでも満足していた。
その頃は、本当に”文面”で知っていたにすぎないから。
そういえば、世話係がいた。
顔も思い出せないが、確かにいたのだ。
しかし、世話係は笑うこともなく、話しかけてくることもなかった。
どちらかといえば、俺を嫌悪していたのだろう。
関わり方のわからない俺は、思う通りに行動した。
それが、さらに世話係を追いつめたのかもしれない。
何人も何人も、最短1日でやめていく人間たちをみて、俺は何とも思えなかった。
いや、寂しいと、辛いと思っていたが、それを指し示す言葉がわからなかったんだ。
何処も悪くしていないはずなのに、お腹の辺りが痛かった。
頭が痛くなったりもした。
もしかしたら、気がついていたが、知りたくなかったのかもしれない。
観察されながら、日々を淡々と生きていた。
そんなときに言われた言葉、
『母親はジェノバ、父親はいない。』
そう言うものなのか、と頷いた。
だが、父親と母親と言うものが、俺にとってどんなものなのかわからなかった。

俺の周りにいるのは俺に感情を向けない科学者と、温度を感じさせない世話係だけ。

俺は独りだった。
(彼らにとって俺は観察対象であり、決して人間ではなかったのだ。)
(でも、それ以外の接し方を俺は知らなかった、)

「では、そろそろ武器を持たせてみよう。」


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