鬼神 | ナノ



きょうし 1/2


司馬師様との付き合いも五年になる。
だが、一日も欠かさず肉まんを召し上がるあの方は、肉まんの化身か何かだろうか。

「おーい、氷雨、兄上はいるか?」
「現在はお休みになられております」
「マジかぁ…聞きたい所があったんだけどなぁ」

竹簡を持つ、既に私の身長を超える、十三歳の司馬昭様。

「私でよければ、お話くださいますか?」
「お、本当か?此処なんだけどな、」

見せられた竹簡を視線で追う。
兵法らしい。
とりあえず、どう理解しているかを確かめて、導くような形で答えに近づける。
元々頭が悪い方ではない。
気がついたように顔を上げ、そういうことか!と笑う。
こくり頷いて、ありがとなー、と言いながら手を振る彼を頭を下げて見送った。

のであるが、私は何故、司馬懿様に呼び出されたんだろうか。
司馬懿様の隣には司馬師様と張春華様がおり、私の隣に司馬昭様がいる。
誰が口を開くのか、とビクビクしていると、司馬師様が静かに告げた。

「氷雨、お前は私の護衛だろう?」
「はい」
「では何故、昭を手伝ったのだ?」
「兄上!氷雨は俺を助けてくれただけで!」
「昭、お前には聞いておらぬ」

司馬懿様の言葉が静かに響く。
そして言葉は続けられた。

「氷雨よ、師の護衛を放棄したことを認めるか?」
「父上!氷雨は兄上の部屋の前から一歩も動いていません!」
「…は?」

司馬懿様と司馬師様の声がはもった。
張春華様は楽しそうに笑っている。
どういうことなのか、まるで理解が出来ない。

「氷雨は教えるのが上手ってことね」

にっこりと笑っている張春華様の言葉に首を傾げる。
と、扉が叩かれ、賈充殿が現れた。
真っ直ぐに私に近づいてきた彼は、私の腕を掴み、至近距離で視線を合わせてきた。
にやりと笑ったその顔は酷く整っているが、血の気が悪い。

「お前が氷雨か」
「はい…ええと、賈充殿、私に何か御用が…?」
「どうやってコイツのやる気を出させた?」

爛々と輝く瞳が恐怖を感じさせる。
ていうか、流石にこの距離は恥ずかしい…んですが。
思わず目を逸らし、一歩引く。
が、逃がさないとでも言うかのように反対の腕が私の腰に回った。
年下の軍師見習いとは思えない逞しさを感じてしまい、近さも含めカッと頬が染まるのを感じる。

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