鬼神 | ナノ



はじまり 1/1


生まれてから、二年経つ前に武器を握っていた。
得意は作っても、不得意は作ることを許されず。
背の高い父母のお陰か、年にしては背が高い方である。
とは言え、父も母も名のある武将の方達と並ぶとやはり小さいのだが。

「そろそろお前も主人を持つ時期だな」

父にそういわれ、こくりと頷いた。
内心、面倒くさいとか、外れに当たったらどうしてくれよう、とか思ったりしているのだが。
そんなこと口に出せる訳も無いので、こういうときは無言で頷くに限る。
とはいえ、父は護衛武将、母は護衛女官、どうせ私も護衛女官だろう、と思った時期もありました。
…女官としての色々が出来ればねぇ。
お茶はまだギリギリ淹れられる、肉まんも作れる。
だが、それだけだ、家のことなど殆ど出来ない。
戦いに特化し過ぎたらしい、その所為で父は母に幼い頃から武器を持たせるから、と怒られたらしい。
よって、私の妹も弟も物心ついてから武器を握ることになった。

「行くぞ」
「はい、父上」

そして、翌日、曹操様にお目通り願い、それが承諾される。
父の横で膝をついて、拱手、人の気配は4つ。
どうやら、曹操様と夏侯惇様、曹丕様、司馬懿様がいらっしゃるらしい。

「いくつだ、その娘は、」
「十になります」
「ふむ、顔を上げよ」

言われた通りに、顔を上げ、曹操様を真っ直ぐに見据える。
病を召されているのだろう、と一目見た瞬間にわかった。
曹丕様は真っ直ぐに此方を見据え、値踏みをするようにこちらを見ている。
そしてもう一人、司馬懿様の視線は酷く鋭い。
だが、見ているのは、私ではない、父だ。
次の瞬間、ゾクリ、と殺気が背筋を走る。
隣の父と同じ動きで、曹操様方の盾になるように出入り口の方を見た。
入り口から近寄ってくる数人の人間を見て、違う、と判断。
父が彼らに向かっていくのを見ながら、視線を彷徨わせた。
思い当たるのは一人しかいない。

「流石は我が娘、と言った所か」
「…彼らのような兵卒に、アレ程の殺気が出せるとは思えませんので、それに」

言いながら、自身の肩に巻き付いている青い布を引き抜く。
彼らから武器を受け取った父に眉を寄せた。
これは、本気の謀反か、それとも、私の試験か。
それを判断するためには、全員、一人として殺してはならない。

「司馬懿様の瞳は、父上を鋭く見つめていましたから」
「…私か」

後ろから司馬懿様の声が聞こえるが、まあ、気にしない。
ていうか、父は誰の護衛武将だっけなぁ、母はシン姫様の護衛女官だったけど。
なんて、考え事をしていて倒せる相手ではない。
布をくるくると回してから、一ヶ所結び目を作る。
父が不思議そうな顔をしたのが見えた。
…サーセン、うろ覚えな前世の知識です。
とりあえず近寄ってきた雑魚さんたちは、鳩尾に右拳を叩き込んで、気絶してもらう。
父の元へ走っていき、右手で縄を輪になるように持つ。
跳び上りながら、それを首に引っ掛けて、引き倒す。
丁度結び目がいい所に来たらしく、呼吸困難になっている父。

「…痛いです、父上」

左鎖骨に切り傷が残った。
思わず眉を寄せるが、とりあえず拘束が先だろう。
と、全員をそれぞれが元々着ている服で縛り、傷が痛ぇなぁ、と思いながらも拱手の形を取る。

「我が息子の護衛を任せたいのですが、よろしいですか?」

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