みおくる 1/2
公孫淵を討ってすぐに、司馬懿様が帝の補佐となった。
…だが、その帝は、曹叡様ではない。
「逝くか、弟よ」
「はい…不甲斐ない私をお許しください、姉上」
「いや、いい…我らは仕えると決めた主人の全ての道を切り開くのだ…お前も、曹叡様の道、切り開き続けろ」
申し訳なさそうに、私が以前渡したその竹簡を私に差し出す弟。
深呼吸して、問いかける。
「名は?」
「…英です、姉上」
「英か…曹叡様から良き名を賜っていたのだな」
嬉しそうに笑った弟・英は、私に自身の獲物である弧刀を見せる。
一度深呼吸をして、それを受け取る。
ぐ、と力を込めて、告げた。
「柳英、今までの護衛良きものだった…次は、あちらで主人をお守りせよ」
「…ありがとうございます」
「苦しまないよう、迷わないよう…送りだしてやる」
抜刀して、微笑みながら目を伏せた弟を斬る。
痛みは感じなかっただろうか。
その顔を見れば、護衛としての、私たちの育てられて教えられた志に反することはないのだとわかる。
だが、手がカタカタと小さく震えるのは何故だろうか。
は、と震える吐息を零してから、目を伏せて一度深呼吸する。
弟から流れ出した血の匂いがして、唇を噛んだ。
自身の服で血が滴らないよう包んだ弟を担ぎ上げて、ゆっくりと歩く。
汚れてもいいように地下牢だったのが仇となっただろうか。
地上に上がり、すでに司馬懿様より許可を得たその場所で、一つの棺に弟を寝かせる。
「柳英…しかと、お守りせよ」
言いながら、その棺に油をかけ、火をかけた。
燃えていく様子を見つめる。
「姉様…?!まさか、それは、」