悪魔の寵姫 | ナノ



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脳内会議は盛んです

彼女の言葉に頷いて、フィールドに目を向けた進は、まだ何か気になるのか、氷雨さんを気にしている。
ていうか、完全に色々アウトじゃないんですか、とショーグンに視線を向けた。
驚いたような、唖然とした表情を浮かべているショーグンと高見さん。
二人に試合始まりますよ、と告げると、ハッとしたように視線が移った。

「網乃サイボーグス戦開始です」

彼女の静かな声がビデオに吹き込まれる。
それからも、試合の流れを説明していたり、冷静に網乃の試合運びを解説している。
泥門について一言も漏らさないのは、王城の中にいるからだろう。
試合が膠着し始めた、その時。
フィールドにバイクが走り込んで、一人、赤いユニフォームが空を舞った。

「アイシールド21、到着です」

氷雨さんの静かな声が状況を正確に伝える。
アイシールド21の進化は、目を見張るものがあった。
進も今はもうフィールドにただただ集中している。
ハーフタイムになって、彼女は一度録画を止めた。

「あの、若菜さん」
「はい?!」
「その、お聞きしたいんですけど…」

続いた言葉は、進さんって、人の体触るのが趣味なんですか、だった。
思わず、俺が否定してしまうくらいには、衝撃的な発言で。
そんな変態的な趣味は持っていない筈だ、と思う。
中学から一緒にいるが、氷雨さんを触っていたときのように誰か触るなんて初めて見た。

「私は触られたことないですし、桜庭さんの言う通り趣味ではないと思いますよ」
「そう、ですよね」

納得いかない、と顔に書いてある彼女は首を傾げるようにしながら、頷いた。
そうだ、と思いついて、声をかける。

「進、」
「何だ」
「なんでいきなり氷雨さんを触り始めたんだよ」

少し考え込むようにした進はちらり、と氷雨さんを見つめた。
それから俺に視線を戻して、一度頷いた。
いや、わからないから。

「彼女の体に興味がある」

ホワイトナイツが静まり返った。
吃驚したような顔をした氷雨さんは、ぽん、と手を叩く。

「そんなに贅肉の存在が気になります?」
「え?」
「多分、進さんの身近に私みたいなのがいなかったんでしょう?」

困ったように笑って、若菜さんは鍛えられている訳ではありませんが引き締まっていますし。
と続けた。
そこで、体ってそっちか、と理解が及んだ。
氷雨さんが眉を下げて、進に気をつけなくちゃダメですよ、と声をかける。

「下手に女の子に触ると、セクハラとか色々面倒なことになっちゃいますから」
「…なら、あなたなら構いませんか?」

首を傾げて、彼女を見つめる姿に、思わず額を抑えた。
高見さんやショーグンもどうにもできないのか、口元を引きつらせている。
困ったように視線を動かしていた氷雨さんは、全員を見てから最後に俺を見た。
進に視線を戻して、時々ならいいですよ、と笑う。

「と、桜庭さん、連絡先交換させていただいても?」
「…進がすみません」
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