悪魔の寵姫 | ナノ



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こんなにも愛している事

今日は、秋大会の開会式だ。
集合場所に向かえば氷雨さんが、大きく手を振っている。
その隣には蛭魔がいつものようにマシンガンを肩に担いでいた。

「遅いですよ、一輝さんに浩二さん、庄三さん!」

ぷくり、頬を膨らませながらも、何処か楽しそうだ。
そのまま全員で会場に向かう。
いつものようにスーツだが、あまり大人っぽさを感じさせない氷雨に首を傾げた。
じっと見ていればそれに気がついたのか、内緒話をするように手招きをする。
腰を曲げて、顔を近づけると、嬉しそうに囁いた。

「あのね、今日はナチュラルメイクに挑戦したんです」

気付いてくれたの一輝くんだけなんですよ、とにこにこと笑う。
氷雨さんは、気がついてくれたお礼です、と言いながら、鞄を漁った。
そこから出てきたのは、小さなお守り。

「時間がなくて、まだ一つしか作れてないんです。だから、内緒ですよ」

悪戯っぽく笑う姿に、どきりとして、ただ、ああとだけ頷いた。
受け取ったそのお守りは、手の中に隠れてしまう程小さなもので。

「おい!何やってやがる!!さっさと行くぞ」
「はぁい、妖一さん、今行きます」

俺の顔を見てから、小走りになる。
その後を追うようにゆっくり歩き始めた。


ロッカールームでニコニコと笑う氷雨さん。
手元には電源を切ろうとしている携帯電話。

「あ、氷雨さん、携帯番号教えてください」
「私ですか?」
「はい、氷雨さんです」

嬉しそうに話している女二人の元に、バスケ部二人が近寄ろうとしているのが見えた。
目を細めて、携帯を差し出す。
きょとんとしている二人に肩をすくめた。

「赤外線でアドレス送るなら二台あった方が楽だろ?」
「貸してくれるの?」
「じゃなきゃ渡さねぇよ」

マネージャーの言葉に笑えば、氷雨さんがありがとうございます、と受け取る。
それから、すぐに携帯を弄り始めた。
と、網乃高校が現れる。
氷雨さんは首を傾げて彼らを見た。
そんな彼女に気がつかないで、アイツらはいきなり脱ぎ始める。
人工的な筋肉を目にして、セナがそういうと、褒め言葉だと喜ぶヤツら。

「人工的ですか…」
「おや、あなたは?」

口元に手を当てて何やら考え込む氷雨さんに網乃高校のヤツらが視線を向ける。
彼女はじっとヤツらを見つめ、それから俺たちを順に見つめた。
もう一度人工的な筋肉に視線を向けて、にこり笑う。

「魅力が感じられません」
「おや?そうですか?」
「ええ、うちの学校のメンバーの筋肉の方がセクシーですよ」

それに、強いですし。
自信満々に綺麗に笑った氷雨さんは、マネージャーに声をかけて、優雅にロッカールームから出て行った。
思っていた以上に、俺たちは彼女に愛されているのかもしれない。
ふと携帯を渡したままだと気がついた。
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