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不満そうな悟飯君。
近くにビーデルさんは来なくなりました。
それが何故なのか、私にはわかりませんが、多分、責任を感じているのだと、思います。
別に、彼女にどうという感情は抱いていません。
彼女の意見であっても、実行したのは警察、彼女は本来守られるべき一般市民です。
「氷雨、」
「なんです?」
「好きだよ、」
「…何となく、知ってました。」
そりゃぁ、アレだけべたべたされていたら、腕がないとか関係なく、好かれているとわかります。
というか、むしろ、手がないからという理由だけで、一緒にお風呂に入ろうとしてきた時点で怪しみました。
カップルでもないのに、フォークを差し出してくれることなく、はいあーんに行くことであれ?と思います。
極めつけは、登下校時の抱き上げてもらっているときの心拍でしたが。
やっぱり?と特に焦った様子もなく笑う悟飯君は若干腹黒いと思います。
「答えは?」
「…好き、ですよ。」
よかった、と笑った悟飯君にじゃぁ、大丈夫だね、とよくわからない言葉をかけられたその日。
お家に帰って、お付き合い宣言をチチさんとピッコロさんに一緒にさせられました。
嬉しそうなチチさんはお義母さんと呼んでくれ、と綺麗な笑顔で言い切っていましたし。
ピッコロさんは冷静にそうか、と告げた後、若干憐れむような目で私を見ました。
「ねえ、氷雨、」
「なんですか、」
「もし、僕が全部を仕組んでいたとしたら、どう思う?」
「全部って、何処からどこまでですか?」
首を傾げて問う。
彼は嬉しそうに笑い、私を後ろからぎゅうと抱きしめました。
「君が読む本全部に僕の名前があったところから、今この状況になるまで。」
つまり、私が腕失くしたのも、全部彼の所為だったら、ということでしょう。
もし、なんて言葉を使っているものの、そうではないと、本能的には気がついていました。
なのに、逃げようと思わなかったのは、きっと、もう、染められていたからなのだと思います。
「なら、腕を失った責任を取ってもらわないといけませんね。」
ふふ、と笑って見せれば、彼の腕の力が強くなります。
それから、凄く嬉しそうな声色で、勿論、と答えました。
「ねえ、氷雨。」
「なんですか、悟飯君。」
「やっぱり、いい加減敬語やめてよ。」
「悟飯君が嫌がるなら、やめることにする。」
悟飯君の胸に寄りかかって、首をそらして見上げる。
嬉しそうに、楽しそうに笑う彼は、頬にちゅ、と唇を押し当てた。
そして、そのまま一度キスして、完璧な笑顔を浮かべる。
「ずっと、俺のものだよ、逃げちゃ、駄目だからね。」
純粋な笑顔を浮かべる彼にやっぱりか、と思いながら、うん、と頷く。
契約の成立を示すかのようにもう一度、ちゅ、と口付けた私たちはお互いを見つめて笑った。
私は、孫悟飯が好きだ。
きっと、愛しているといっても過言ではないだろう。
そして彼も、私を好きで、好きで、たまらないのだ。
これは、予想でもなんでもなく、ただの事実。
「愛してるよ、氷雨。」
私はその言葉に、うん、と頷き、私も、と返した。
あとがき
結果、どっちも病んでました…というエンドなの、かな。