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私にも、好きな人が出来ました。
ただ、残念ながら、その人には、仲のいい女の子がいます。
本人たちは否定しますが、まるで、付き合っているように仲がいいのです。
勿論、私が聞いたわけではないのですが。
他のお友だちにからかわれているのをちょっと盗み聞きしてしまいました。
ちょっと申し訳ないと思いましたが、恋する乙女の行動は理性じゃ止められませんでした。
文献ではよく目にしていたのですが、信じていなかったことです。
だからこそ自分がこんなになるなんて思っても見ませんでした。
…ああ、私の好きな人を言っていませんでしたね。
孫、悟飯君といいます。
成績優秀、ですがちょっとサボり魔、人柄としてはとても穏やかな青年です。
ふわふわと、柔らかな雰囲気なので、皆に好かれています。
ちなみに、私はほとんど接点はありません。
しいて言えば、クラスメイトで、時折言葉を交わすくらいでしょうか。
どうして、そんな人を好きになってしまったのかといえば、図書室で借りる本にいつも名前があるんです。
私が読む本だけじゃないと思うのですが。
それでも、そこから気になってしまって、どんな人なのかと考える日々。
で、ある日、借りようとした本が被っていたらしく、よくある手を伸ばしたら…っていうやつでした。
とりあえず、私は他の本も借りようと思っていたので、彼に譲って、他の本を借りましたが。

「うーん…。」

恋愛小説の一説を人差し指でなぞって、首を傾げます。
“私はいつから欲張りになったのだろうか、最初は見ているだけでよかったのに”
よくある、一つの言葉。
でも、こんな事で悩むなんて、どうしようもないと思うのです。
見てるだけでいいのは、恋愛ではない、とお友達に言われたからかもしれません。
その子は私の親友なのですが、彼女の個人情報のため、名前は伏せさせていただきます。
恋、とは中々に難しいものです。

「氷雨さん、どうかしたんですか?」

びくり、背筋を伸ばし振り返りました。
そこには、今まで考えていた孫悟飯君、その人が立っています。
何度か瞬いて、なんでもありません、と口にしました。
少し不満そうに眉を寄せた彼は、でも唸ってたでしょう?と会話を続けようとします。

「久し振りに、恋愛小説を読んでいたもので。」
「恋愛小説…?」
「はい、この小説はモテモテなのに鈍感な男の子に恋をした女の子のお話です。」

まるで、私のようだ、と思わず手にとってしまっていました。
当然、私の将来がこうなればいいと思ったわけではありません。
むしろ、自分自身の恋をどこかで諦めているからこそ、同じ状況で幸せな小説を読みたかったのでしょう。
きょとん、と首を傾げた青年は、ニッコリと笑いました。

「おもしろい?」
「そうですね…ファンタジーの方が面白いです。」

色々と勉強にはなりましたが。
付け加えれば、吃驚したような声が聞こえます。
ふと、彼の顔を見上げれば、困ったような焦ったような表情で、えっと、と言い難そうに口ごもりました。

「氷雨さん、好きな人、いるんです、か?」

そういうことですか。
そうですよね、勉強になる=役に立つですよね。
他にもたくさんの恋愛小説を読んだ結果、此処での答えはなんパターンかあります。
でも、これからも、この距離を変えることなく、生活するためには、どの答えが一番なんでしょうか。

「…最近、もしかしたら、恋をしたのかもしれないと思いまして。」
「……読んだ、結果は?」
「どうやらそうらしい、と。」

ぽかん、と口を開けた彼に、少しだけ笑いそうになります。
が、ふと、悟飯君から、距離を取った後ろのほうに立つ、女の子の視線がきつい事に気がつきました。
彼と仲のいい、女の子です。

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