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「…氷雨、」
「なんですか、リーダー?」

首を傾げながらリゾットを見つめているのは、俺の弟分であるペッシの姉。
同時に、リゾットに教育された、ヤツと同じようなタイプの暗殺者だ。
どんな能力なのか、と問えば、空気中で一番多い元素を扱う能力だと返された。
外見に十分すぎる程に気を使っている彼女は、そういう方法で暗殺することも多い。
無論、顔を知られないように色々大変なようだが。

「仕事だ、俺と組むので構わないか?」
「珍しいですね、パーティー系ですか」
「ああ」
「なら、あとでターゲット好みのドレス選んでください」

淡々と会話をするその様子に、ペッシを確認する。
本当に血がつながっているのか、と疑いたくなる程に似ていない。
外見も、性格も、覚悟までも。
ふと、気がついたように彼女はじっとリゾットを見つめる。

「何だ?」
「いえ、マニキュアの色を考えてて…リーダーの目に合わせて赤にしようかと」

言いながら立ち上がり、彼女ばかりが使うキッチン用品のある一角から一つのポーチを取り出した。
真っ赤なそれと、ベースコートを机において、もう一度席に着く。
ベースコートを塗りながら、何か言いたげな表情をしているリゾットにちらりと視線を向けた。
ドレスに色を合わせなくていいのか、と不思議に思いながら、成り行きを見守る。

「ドレスの色は、」
「私の持ってるものならどれでも平気です。元々リーダーに合わせられるドレスしか持ってませんから」
「そうか」

納得したように頷いたリゾットに、思わず眉を寄せた。
氷雨のパーティー任務は少なくない。
招待客を全部消すものでない限り、ほとんどの場合、メンバーに同伴しているはずだ。
にも拘らず、さっきの発言。
そう言いたい俺の視線に気がついたのか、彼女はこちらを見て肩をすくめる。

「塗ってやろうか?」
「…、じゃぁ、お願いします」

少し迷ったようにして、赤いマニキュアと白い手を差し出してきた。
丁寧に指先までをケアされているその手をとって、ベースコートが乾いているのを確認する。
それから、明るめの赤を丁寧に乗せ始めた。

「…器用なんですね」

俺の手付きを見ながら、ゆるゆると口角をつり上げる。
塗られたマニキュアに細く息を吹きかけながら、氷雨は笑った。
表情は妖艶というに相応しく、マニキュアよりも鮮やかなターゲットの赤に濡れていれば、更に凄絶だろう。
そう考えて、ぞくり、としながら、白い手にそっと口付けた。

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