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ある姉の話


私の弟は酷く弱虫であるが、唯一の血縁でもある。
そんな彼を守るうちに、大切なものが増えたように思う。


「待ってよ、姉さん、」

私の後を追いかけてくる弟に足を止める。
軽く振り返れば荷物を持って、慌てて走ってきていた。
追いつくのを待ってから、もう一度、今度はゆっくりと歩き始める。
身長は弟の方が高いのだから、私の歩幅に追いつけないと言うことは無いはずなのだが。

「今日も姉さんが料理作ってくれるの?」

その言葉に肩をすくめて、未だ後ろを歩く彼を振り返り、見上げる。
背は高いのに足が短いと言うことなのか、なんて思わないでも無い。

「別に、作らなくていいなら作らないけど」
「オメーが作らなかったら、誰が作るんだよ」

後ろ、つまり進行方向から、呆れたような声で返事があった。
首だけで振り返れば、男とは思えないくらいの美貌をもつ弟の教育係がいる。
兄貴!と尻尾を降り始めた弟を横目で見ていると、がしり、と肩を掴まれた。
その反応に、ぱちりと瞬いて、口元に笑みを浮かべる。

「ちゃんと作りますよ」

弟はできなくはないけど、その程度だし。
アジトには誰がいるのかわからないけど、多分チームの中で一番料理ができるのは私なのは間違いない。
だからと言って毎回料理を作っている訳じゃないけれど。
そのまま3人で隠れ家に帰り、料理を作る。
全員がいる訳ではないが、何故か食事時になると普段より多くいるような気がする。
と、言うことは普段から部屋にはいる、と言うことなのだろうか?

「どうかしたのか?」
「いえ、なんでも。リーダーは此処で食事されますか?」

私の教育係であったチームのリーダー、リゾット・ネエロに言葉をかけた。
ああ、と一度頷いた彼を確認して、新しい皿を取り出す。
そういえば、私が彼に教育された時間はかなり短かった、と思う。
他のメンバーたちがどうだったのか、は知らないが、弟よりは断然短かった。
一緒に仕事に行ったのも、数えられる程度だったし。
このチームに入った時点で既に私は基礎の部分が“出来上がっていた”ということもあるのだろう。
そう思いながら食卓に着いた。

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