籠球 | ナノ



3


少し、お互いの間に距離を作って、目線をあわせる。
きらきらと光が入るその目に見つめられると、全部が見透かされているような気持ちになる。
ゆっくりと、瞬くその瞳から気恥ずかしくて視線を落とす。
壊れ物を触るかの様にそっと、私の頬を撫でる手が首へ降りた。
親指一本で顎を持ち上げられ、目を伏せる。
ふわり、かるく触れた唇に気恥ずかしいような、嬉しいようなそんな気持ちになる。

「慣れないな、」
「…悪い?」
「いや、全然。むしろ可愛い。」

ちゅ、と今度はリップ音を立てて、頬に口付けられる。
自分の顔が熱くなるのを感じた。
そんな様子の私を見て、嬉しそうに、楽しそうに笑う彼はほら、帰るぞ、と私の手を引く。
近くにあった体温が無くなって、淋しさが私を襲うが、指が絡められ、そちらに意識がもって行かれる。
ふ、と自然に笑う彼と目が合った。

「っ、」

その表情に、苦しいような、切ないような、それでいて、嬉しくて、心地よいような複雑な感情が渦巻く。
勝手に泣き出しそうな自分に戸惑いながら、つないだ手をぎゅっと握った。

「どうした?」
「…あの、ね、」
「ああ、」
「バスケに恋してない、…け、健司も好き、だよ?」

顔を逸らしたまま、ちらちらと反応を確認する。
暫く固まっていた彼は、嬉しそうに頬を緩めた。
それから、空いている方の手で私の目を隠す。

「嬉しい。」

一言だけ呟いた彼は、体育館から外に出る前、一度だけ私にキスをした。

(「あ、氷雨、明日暇か?」)
(「え?うん、暇だよ。」)
(「久しぶりにデートしようぜ。」)
(「っうん!」)
(「行きたいところは?」)
(「特に無し、一緒にいられれば満足。」)
(「…関係ねーんだけど、俺時々お前が二重人格なんじゃないかと思う。」)
(「え?!何で?」)
(「いや俺が聞きてぇよ、お前が恥ずかしがる基準がわかんねぇ。」)
(「そう?」)
(「そうだよ、全く…。」)
(「?」)



あとがき
前サイトで、由希さまに捧げたものです。


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